TEDは最強の英語学習素材だ。特に、ビジネスパーソンの皆さまに強くおすすめしたい。しかし、選び方や勉強法によっては、全く効果が出ないことも多い。あなたの英語力を飛躍的に向上させるための3つの注意点と科学的な勉強法(トレーニング法)をご紹介しよう。
リスニング力とリーディング力の強化方法だけではなく、スピーキング力、ライティング力を強化するためのトレーニング法もご紹介する。TEDで効率的に4技能を向上させよう。
英語学習に最適な5つ(+α)のおすすめTEDもご紹介する。是非実際にトレーニングしてみて、その効果を実感して頂きたい。
目次
1. TEDで英語学習|3つの注意点!
TED(Technology Entertainment Design)とは、大規模な世界的講演会「TED Conference」を開催している非営利団体の名称だ。しかし一般的には、インターネットで無料配信されている、TED Conference などで行われたプレゼンテーション(TED Talks)を総称して「TED」と呼んでいる場合が多い。
TEDは世界の著名人によるプレゼンテーション(英語)であり、内容的に非常に優れたものが多いので世界的に注目を集めている。一方で、日本では英語学習素材として活用している方も多くなってきている。
TEDは日本人の英語学習者にとって非常に良い学習素材だ。その理由は後ほど説明するが、ここでは、TEDを使って効率的に英語学習するための下記の3つの注意点をご説明したい。
- TEDで英語学習を始める前に基礎力を強化しよう!
- 自分のレベルや目的に合ったTEDを選ぼう!
- TEDの日本語訳は見ないようにしよう!
1.1 TEDの前に英語の基礎力強化!
TEDは上級者向けの英語素材だと思って頂きたい。TOEIC(LR)で最低でも700点程度の基礎力がないと、TEDによる効率的な英語学習は望めない。基礎力とは、「単語」「文法」「発音」の3つの言語の基本構成要素のことだ。
1.1.1. TEDに必要な単語力
TEDを活用して効率的に英語学習したいのであれば、まずは最重要語「2,000語」を「深く」理解しておく必要がある。なぜ2,000語なのか?
獨協大学の教育工学准教授の堀江氏は、英語を適切に理解するには最低でも80%以上の単語を知っている必要があると指摘している。一方で、神戸大学の石川慎一郎教授の研究結果によると、下図の通り、話しことばでは最重要語2,000語で約90%を占めるのだ。
ちなみに、TEDはプレゼンテーションなので「話しことば」の部類に入る。話しことばでは、難しい単語は避けられる傾向があるので、必要とする単語数が少なくなる。
*出典:神戸大学・大学院准教授 石川慎一郎(2012)「ベーシック コーパス言語学」
英語の単語数の詳細については「英語の単語数は2000語で80%!数より質で効率的に語彙力アップ」を参考にして頂きたい。
それでは、なぜ「深く」なのか?最重要語は、様々な意味を持っており、そして色々な使われ方をするからだ。
例えば、「take」という単語は、「取る」と覚えている人が多いだろう。しかし、「take a test」「take a shower」「take a bus」「take a walk」など、「取る」と覚えるだけでは全く意味がない。最重要語は、例文とともに、色々な意味を「深く」学習する必要があるのだ。
また、最重要語の動詞は、後ろに前置詞や副詞がついて、色々な意味に派生する。それらを「群動詞」もしくは「句動詞」というが、覚えておくべきものは数多い。なぜなら、話しことばでは難しい単語はあまり使われない代わりに、この「群動詞(句動詞)」が頻繁に使われるからだ。
TEDは専門的な題材が多いので難しい単語もよく出てくる。従って、最低でも最重要語は辞書を引かずに理解できるようにしておかなければ、英語を理解するだけでも途方もない時間がかかってしまう。効率的な英語学習とは到底言えない。
なお、単語の効率的な覚え方については「英単語の覚え方|自動化トレーニング8選!科学的勉強法で暗記を効率的に」を参考にして頂きたい。
1.1.2. TEDに必要な文法力
文法については、最低でも高校1年くらいまでの基礎的文法を理解しておかなければ効率的な学習は望めない。加えて、ある程度英文を英語の語順で前から理解できるようにしておきたい。
文法についても、単語同様、話しことばではあまり難解なものは出てこない。一方で、書きことばではあまり見かけない、話しことば独特の文法もある。例えば、話しことばでは省略が多くなる。このような話しことば独特の文法は、TEDを学習しながら習得していけば良いのだが、そのためには最低限の基礎的文法の知識は必須である。
また、TEDにはプレゼンターに対して時間制限を設けているため、ほとんどのプレゼンターは通常より早口で話している。ゆっくりとしたスピードであれば聞き取れるが、速いと聞き取れないという方が多いと思うが、その一つの理由は、英語の語順に慣れていないからだ。英語と日本語の語順は全く違いので、ある程度英語の語順に慣れていないと、TEDを使用した効率的な英語の学習は難しいだろう。
なお、文法の効率的な勉強法については「英文法勉強法|基礎から効率的に覚える科学的トレーニング8選!」を参考にして頂きたい。
1.1.3. TEDに必要な発音力
TEDを英語学習に使用する上で、日本人にとって最も高いハードルは発音だ。まずは、少なくても英語の発音の基礎を理解してからTEDの世界に入って頂きたい。
発音は、単語と文法と同様に、言語の要素の最も重要な一つにも関わらず、日本の学校教育では全く無視されてきた。従って我々一般的な日本人は、英語の発音について全く知らないと言っていい。日本人の英語が通じない理由、そして日本人が英語が聞き取れない大きな理由の一つは、発音教育の欠如であると指摘する言語学者は多い。
英語の発音の要素は下記の通り5つある。現時点では、これらを意識しながら自分で発音できるようになる必要はない。しかし、まずは英語の発音はこれら5つのことが重要なのだということを理解して頂きたい。理解できたら、TEDを使ったトレーニングを通して自分でも発音できるようにしていけばよい。自分で発音できるようになれば聞き取れるようになる。
- 英語の24の母音と24の子音
- 英単語のアクセント(ストレス)の位置
- 音声変化(リエゾン)
- リズム(強弱)
- イントネーション(抑揚)
なお、上記5つの発音の要素を含めた英語の発音の学習方法については「英語の発音|初心者向け科学的見地からの6つのコツと練習方法!」を参考にして頂きたい。
1.2 自分に合ったTEDを選ぶこと!
効率的な英語学習にはTEDの選択も重要だ。選ぶ際はプレゼンテーションの内容(題材)と、使用されている英語に着目しよう。
1.2.1. 興味と知識がある題材のTEDを選ぼう!
興味があり、そして、ある程度知識がある内容のTEDを選べば、英語学習の効率性を上げることが可能だ。
スウェーデンの神経生理学者ブリスとレモが、θ波がシナプスの活動を活性化することを発見したそうだ。これは脳内にθ波を発生させれば記憶力が向上するということ。東京大学大学院神経生理学准教授の池谷氏は、θ波を発生させられるもっとも効果的な方法は、覚えたいものに興味を持つ事だと指摘している。
早稲田大学名誉教授の ジェームス M バーダマン(James M. Vardaman)氏の研究によると、自分が面白いと思って読んだ(聞いた)ものは、可もなく不可もなくというものに比べて、インプット率(内容の定着率)が1.15倍に上がったそうだ。
また、ピッツバーグ大学言語学科教授の白井氏は、「自分の興味分野を徹底的にインプットする」「ナロー・リーディング(ナロー・リスニング)」を勧めている。背景知識があれば、知らない単語なども推測しやすくなり内容理解につながりやすい。内容が似ていれば、単語や表現も同じものが出てくるので習得も進むと指摘している。
1.2.2. 自分が目標とする英語が使われているTEDを選ぼう!
一番重要なことは、自分が理想とする英語が使われているTEDを選ぼう。それがイギリス英語なのかアメリカ英語なのか、お堅い学者タイプなのかフランクな経営者タイプなのか、それとも政治家タイプなのか等、それぞれの好みで良い。しかし、いずれにしろ英語のネイティブ・スピーカーによるTEDを選んだ方が無難だ。非ネイティブは、単語・文法・発音や表現について誤った使い方をしている可能性が高くなるからだ。
また、既に触れたが、少なくとも最初のうちはある程度知識がある内容のTEDを選ぶことが重要だ。全く知識が無いにも関わらず、興味があるからといって、お堅い学者タイプのプレゼンターの超専門的なTEDを選ぶと、専門用語を調べるだけで終わってしまう。
話すスピードも重要だ。最初はゆっくり目に話しているTEDを選ぼう。なお、TED関連のアプリの多くにはスピードを調節できるものもあるが、あまりおすすめしない。その機能を使うことにより、プレゼンテーションの臨場感がなくなり、興味が薄まってしまう可能性が高いからだ。TEDを使って英語を学習する場合は、「面白い」という感情を大切にして頂きたい。
1.3 TEDの日本語訳は見ない!
TEDの英文スクリプトを読んでも内容が理解できないからといって、日本語訳を読むことは絶対に避けて頂きたい。効率的な英語学習の妨げになってしまう。
英語で流暢にコミュニケーションできるようになるためには、英語を英語のまま、英語の語順で理解し、使えるようになる必要がある。そのためには、英語を使うときは、なるべく日本語を介入させないようにすることが重要だ。英文スクリプトを読んで理解できないからといって、日本語訳を読んで理解してしまうと、「日本語に訳して理解する」学習になってしまう。中学・高校でやってきた「使えない英語学習」に逆戻りだ。
単語の意味を確認するために辞書で日本語の訳語を調べることはよい。しかし、センテンスを理解するときは、日本語に訳して理解しようとするのではなく、音読などのトレーニングを繰り返しながら、英語の語順で英語のまま理解するように努めて頂きたい。詳しいトレーニング方法は下記でご説明する。
なお、中学・高校での「使えない英語学習」を含めた、日本人が英語が苦手な理由については「日本人の英語力|アジア最低の理由と根本的な5つの対策はこれだ!」も参考にして頂きたい。
2. TEDで英語学習|リスニング&リーディング力強化!おすすめ勉強法
まずは4技能のうち、リスニングとリーディング力の強化方法についてご説明しよう。
TEDを活用した英語のリスニングとリーディングの勉強方法(トレーニング方法)は、その目的によって変わってくる。目的は以下のように大きく3つに分けられる。
- 発音矯正:英語独特の発音に慣れ、自分でも発音できるようにすることでリスニング力強化。
- 英語脳の構築:英語を英語のまま、英語の語順で理解できるようにすることでリスニングとリーディング力強化。
- 単語・文法・英語表現の習得:単語力と文法力のアップと定型表現の理解を促進することでリスニングとリーディング力強化。
3つとも、行うトレーニング自体、その流れを含めて全く変わらないのだが、どれを目的にするかによって、トレーニングを行うときの「意識すること」を変える必要がある。
3つ全てが目的だという方が多いだろう。その場合は、以下で紹介するトレーニングを「意識すること」を変えて3回行う必要がある。それぞれの目的の場合の「意識すること」は以下の通りだ。
- 発音矯正:母音と子音、アクセント、音声変化、リズム、イントネーションのみを意識して、音源とそっくりに発音することのみに意識を集中する。
- 英語回路の構築:意味(内容)のみを意識して、文章を順番通りに前から前から理解することに意識を集中する。
- 単語・文法・英語表現の習得:覚えたい単語、文法項目、もしくは定型表現のみに意識を集中する。
なぜこのように分けてトレーニングする必要があるのか?それは人間の脳はマルチタスクが苦手だからだ。例えば、人間は、発音と内容(意味)を同時に意識しながら音読できない。本当かどうか知りたい場合は自分で試してみよう。
2.1. 自動化トレーニング22選
TEDを活用した英語4技能のトレーニング方法は、上図にあるように全部で22種類ある。一番重要なことは、「目」と「耳」と「口」(と「手」)を使って体全体でトレーニングすることだ。それによって効率的に脳に定着させることができ、英語回路を構築することができる。
体全体でトレーニングするためには、上記の22のトレーニングのうち、いくつかのトレーニングを組み合わせて行う必要がある。TEDを活用してリスニングとリーディング力を強化する場合、以下で紹介する流れでトレーニングを行うと効率的だ。
なお、これらのトレーニングは、知識を自動的に使えるようにするトレーニングであるため、The English Clubでは「自動化トレーニング」と呼んでいる。22種類の自動化トレーニング全てのやり方と効果の詳細については「英語トレーニング|4技能を独学で習得するための科学的自主トレ22選」を参考にして頂きたい。
2.2. リスニング&リーディング力強化用自動化トレーニングの流れ
TEDを使って効率的に英語リスニングとリーディング力を強化する自動化トレーニングの流れを紹介する。なお、トレーニングを行うときは、「何を目的にするのか」、そしてその目的のために「何を意識するのか」を考えてから始めて頂きたい。
2.2.1. リスニング/Listening
まずはスクリプトを見ないで、TEDの映像を見ながら通して聴いてみよう。理解の度合いが低い場合は何度か聴いてみる。意味(内容)を理解することのみに集中する。
2.2.2. アイシャドーイング/Eye shadowing
スクリプトを目で追いながら聴いてみる。ここでも意味(内容)を理解することのみに意識を集中する。集中力が持続できない場合は、段落毎(区切りがよいところ毎)に何回か聴いてみる。
2.2.3. 音読/Reading aloud
音源を止め、声を出して音読する。意味(内容)と文の構造(文法)を意識しながら通して読み、次に意味や文の構造がわからないところを辞書などで調べる。全体の内容が理解できたら、再度音読を数回繰り返す。英語の語順のまま前から理解することを意識する。
2.2.4. リップ・シンク/Lip sync
音源を聴きながら、かつ、スクリプトを目で追いながら、音源に合わせて口を動かす。声は出さない。スピードについていきながら意味(内容)を理解することに意識を集中する。何度か繰り返した後、今度は発音(5つの要素)に意識を集中して繰り返す。
2.2.5. オーバーラッピング/Overlapping
音源を聴きながら、かつ、スクリプトを目で追いながら、音源にぴったりと合わせて声を出しながらついていく。意味(内容)を理解しながら、スピードに遅れずについていくことが目標。音源とそっくりに発音できないとついていけない。
2.2.6. ルックアップ&セイ/Look-up & say
センテンス(一文)毎にスクリプトを見ながら音源を聴き、一旦音源を止め、顔をあげて(スクリプトから目を話して)暗唱する。音源を聞かずに黙読したあとに顔をあげて暗唱してもよい。センテンスを一気に暗唱できるようになるまで繰り返す。途中でスクリプトをチラチラ見ないようにする。
2.2.7. リピーティング/Repeating
センテンス(一文)毎に音源を聴き、一旦音源を止めて暗唱する。スクリプトは一切見ない。意味(内容)を理解しながら聴き、暗唱したあと、今度は発音を意識しながら聴き、暗唱してみる。
2.2.8. シャドーイング/Shadowing
音源を聴きながら、1〜2語あとを追いかけるように発音してついていく。スクリプトは見ない。必ず意味(内容)を理解しながら行うこと。発音だけを真似てシャドーイングすることはそれほど難しくないが、それだけでは発音矯正だけで終わってしまう。シャドーイングの効果をフルに享受するためには意味(内容)を理解しながら繰り返し行う必要がある。
なお、慣れてきたら、上記の8行程の全てを繰り返す必要はない。重要なのは音読とシャドーイングなので、その2つを繰り返し行なって頂きたい。
3. TEDで英語学習|スピーキング&ライティング強化!おすすめ勉強法
ここまでリスニング力とリーディング力強化のトレーニングをやってきたが、それを通してプレゼンテーションの内容の理解はかなり進んだはずだ。ここでトレーニングを終了するのは非常にもったいない。是非、スピーキング力とライティング力強化のトレーニングも続けて行なって頂きたい。
実は、ここまでのトレーニングでも、下記の3つの点で、スピーキング力とライティング力の強化につながっている。
- 英語を英語のまま、英語の語順で理解できる英語脳を強化することで、英語を英語のまま発信できる能力が向上する。
- 単語・文法・英語表現を深く理解することで、自分で使える知識(運用知識)になる。
- 発音が矯正されることにより、ネイティブにも理解しやすい英語を話せるようになる。
一方で、ここで紹介する3つのトレーニングは、頭の中で英文を作るトレーニングだ。自分の言いたいことを自由に表現できるようになるためには、このようなトレーニングを地道に行なっていくしかない。是非継続して行って頂きたい。
3.1. リフレージング/Rephrasing
「リフレージング」とは「言い換え」のことだ。つまり「リフレージング」とは、ある表現を、別の単語と文法を使った表現に言い換えることにより、アウトプット(スピーキング・ライティング)の能力を鍛えることを目的としたトレーニングだ。
TEDではしばしば難しい表現が出てくる。しかし、我々日本人の英語非ネイティブにとって、それらの難しい表現は必ずしも使えるようになる必要はない。簡単な別の言い方で表現できれば十分なのだ。その難しい表現を可能な限り簡単な単語と文法のシンプルな英文に言い換えてみよう。
目標は、中学で習う単語と文法を使って言い換えること。自分の英語力で表現できるように、多少ニュアンスを変えてもいい。自分であればこう表現するという英文を作ってみて頂きたい。最初は書きながら、慣れてきたら頭の中で英文を作ってみよう。
我々日本人は日本語は得意なので、複雑なことでも日本語では言える。しかし、英語は苦手なので複雑なことは表現できない。したがって、自分の言いたいことを自分の英語力で言えるくらいまで単純化する能力は、英語で自分の言いたいことを自由に表現できるようになるための必須の能力なのだ。その能力をこのリフレージングのトレーニングで鍛えることができる。是非あなたの英語学習に取り入れて頂きたい。
3.2. サマライジング/Summarizing
「サマライジング」とは「要約」のことだ。つまり、「サマライジング」とは、ある程度の量の英語の文章を、自分のことばで要約することにより、アウトプットの能力を鍛えることを目的としたトレーニングだ。
既に紹介した8行程のトレーニングを行えば、プレゼンテーションの内容は頭に入っているはずだ。その要約を自分のことばで、なるべく簡単な表現を使って書き出して頂きたい。
その際、構成も考慮して頂きたい。英語の文章を書くときは「パラグラフ・ライティング」が基本だ。「結論は最初で、説明はあと」などの基本を含めて、英語の文章の書き方にはルールがある。そのルールに従って書く練習をすれば、英語で表現するときの論理展開も身につけることができる。英語のライティングについての詳細は「英語ライティング|結論が先!単語と文の並べ方と書き方のコツ完全版」(english-writing)を参考にして頂きたい。
3.3. ショート・スピーチ/Short speech
最後に、プレゼンテーションの内容について、自分の考えや感想を短いスピーチにまとめてみる。誰かに聞かせることを前提として、「サマライジング」と同様に、構成に気をつけて、少なくても3パラグラフ(「導入」「説明」「結論」)は書こう。
なるべく自分のことばで、簡単な単語と単純な文法で、シンプルな英語で表現することを心がけて頂きたい。文法的に正しいかどうか自分で判断できないような英文は書かないようにしたい。表現方法がわからなければ辞書などで徹底的に調べて、なるべく完璧な英文を作り上げよう。
スピーチの原稿ができたら、全て覚えて誰かの前で実際にスピーチしてみる。英語ができる人に聞いてもらい、フィードバックをもらえればなおいい。聞いてくれる人がいなければ、録音して自分で聞いてみる。その際は、リズムやイントネーション、スピードなど、聞き取りやすい英語になっているかどうかもチェックして頂きたい。
4. TEDで英語学習|メリットとデメリット
TEDは最強の英語学習素材だ。しかし気をつけなければならないこともある。ここでは、英語学習にTEDをお勧めする理由(メリット)と、デメリットを整理しておく。
4.1. TEDを英語学習に使用するメリット
- 英語の間違いが少ない:TEDのプレゼンテーションは綿密に準備された上で行われている。原稿(スクリプト)も入念にチェックされているので文法などの間違いが少ない。
- スラングが少ない:映画やドラマのように、知る必要のないスラングが少ない。その分効率的に学習できる。
- 生きた英語を学べる:まさに今、世界で使用されている英語を学べる。日本で出版されている英語教材のように古臭い表現などがない。
- 英語のスクリプトがある:聞いて理解できなくても読めば理解できる場合も多い。効率的な英語学習には音声と文字の両方が必要。
- 英語のプレゼンの方法も学べる:プレゼンテーションの構成や論理の組み立て方、ジェスチャーや表情、立ち居振る舞いなど、効果的な英語のプレゼン方法が学べる。
- 話題が豊富:様々な題材を扱っているので、英語に加えて色々な知識を得ることができる。ビジネスパーソンにとって著名なビジネスリーダーのプレゼンは興味深い。
なお、プレゼンテーションでの英語表現や構成方法、スライド作成方法などの詳細については「英語プレゼン|始め方〜締めまで全例文と構成・スライド作成法」を参考にして頂きたい。
4.2. TEDを英語学習に使用するデメリット
- 早口のプレゼンターが多い:TEDのプレゼンは時間が制限されているため、どうしても早口になってしまうプレゼンターが多く、聞き取りづらい。トレーニングには良いかも。
- 英語の癖があるプレゼンターも多い:世界中の英語非ネイティブの著名人も英語でプレゼンしているので、聞き取りづらい英語のものも少なくない。
- 自分に合ったものを探すのが大変:膨大な数のプレゼンがあるが、英語の癖やスピード、そして内容などを考慮しながら自分に適したプレゼンを探すことが大変。
- わからないところは自分で調べなければならない:日本語訳がついているものも多いが、意訳も多いので、未知な単語や文法項目については、自分で調べなければならない。
5. TEDで英語学習|おすすめTalk 5選+α
TEDのデメリットは、自分の英語学習に適したプレゼンテーションを探すことが大変であり、未知な単語や文法項目を自分で調べなければならないことだ。
その両方のデメリットを解消するために、The English Clubでは日本人の英語学習にお勧めのプレゼンテーションをピックアップし、単語や文法の詳細な解説をつけBlogで公開している。
ここでは、それらのプレゼンテーションの冒頭部分を紹介しよう。あなたの英語学習に是非役立てて頂きたい。
5.1. シェリル・サンドバーグ/Sheryl Sandberg
題名:「なぜ女性のリーダーは少ないのか」/ “Why we have too few women leaders”
Facebook の COO (最高執行責任者)。自身の体験から、企業のトップには女性が少ない理由を独自の視点で語っている。彼女のアドバイスは、特に女性のビジネスパーソンの方におすすめ。
So for any of us in this room today, let’s start out by admitting we’re lucky. We don’t live in the world our mothers lived in, our grandmothers lived in, where career choices for women were so limited. And if you’re in this room today, most of us grew up in a world where we have basic civil rights, and amazingly, we still live in a world where some women don’t have them. But all that aside, we still have a problem, and it’s a real problem. And the problem is this: Women are not making it to the top of any profession anywhere in the world. The numbers tell the story quite clearly. 190 heads of state — nine are women. Of all the people in parliament in the world, 13 percent are women. In the corporate sector, women at the top, C-level jobs, board seats — tops out at 15, 16 percent. The numbers have not moved since 2002 and are going in the wrong direction. And even in the non-profit world, a world we sometimes think of as being led by more women, women at the top: 20 percent.
so /sóu/ (副) ところで(文頭に置き相手の注意を引く。)
for /fər/ (前) ~にとって
any of 〜: (肯定文で)〜の誰でも
start out (群動): 始める
by /bái/ (前) ~によって
admit /ədmít/ (動) ~を認める ⇨ ここでは “admit” の後に “that”が省略されている。「“that” 以下を認める」の意。
the world our mothers lived in: “world” の後に関係代名詞 “that” が省略されている。「我々の母が住んだ世界」の意。
our grandmothers 〜: 直前の “our mothers 〜” と並列。
career /kəríər/ (名) 職業
choice /tʃɔ́is/ (名) 選択
the world …, where career choices 〜: “where” は関係副詞。「“career choice” が〜であった所の “world”」の意。
limited /límitid/ (形) 限られた
if you’re 〜: 条件節を導く “if” で「もしあなたが〜ならば」の意。
most of 〜: ~の大部分
grow up (群動) 成長する
a world where we 〜: “where” は関係副詞で「 “we” が〜するところの “world”」の意。
civil rights: 公民権
amazingly /əméiziŋli/ (副) 驚くべきことに
still /stíl/ (副) いまだに
some women don’t have them: “them” は “civil rights” のこと。
all that aside: “putting all that aside” の “putting” が省略されている。「それら全てのことはわきに置いておいて」から「それは置いておいて」の意。
make it to 〜: 「〜までそれを作る」から、ここでは「〜へ到達する」の意。
top /tɑ́p/ (名) 最上位 (の地位)
profession /prəféʃən/ (名) (専門的な) 団体
anywhere /énihwὲər/ (副) どこにも
number /nʌ́mbər/ (名) 数字
tell the story: 「物語を語る」から、ここでは「事実を述べる」の意。
quite /kwáit/ (副) 非常に
head /héd/ (名) (集団の) 長
state /stéit/ (名) (国の) 政府
of /əv/ (前) ~のうち
parliament /pɑ́ːrləmənt/ (名) 議会
corporate sector: 企業部門
C-level: 経営幹部 (CEO、CFO、COO等) レベル
board /bɔ́ːrd/ (名) 取締役会 ⇨ board seat:取締役の座, board of directors: 取締役会
top out at 〜 (群動) 最高~に達する
women at the top, C-level jobs, board seats — tops out at 15, 16 percent: “C-level jobs” と “board seats” は “at the top” の意味を、具体例をあげて説明している。
The numbers have not moved since 2002: 「継続」表す現在完了形で「“numbers” は2002から動いていない」の位。
and (the numbers) are 〜: “the numbers” が省略されている。
direction /dərékʃən/ (名) 方向 ⇨ in the wrong direction: 誤った方向に
even /íːvn/ (副) ~さえ(も)
non-profit (形) 非営利の
the non-profit world, a world 〜: “a world” 以下は “the non-profit world” を説明している。「非営利の世界、それは〜の世界」と訳される。
think of 〜 as …: 〜を…と考える
a world (that) we sometimes think of (a world) as 〜: “a world” の後に関係代名詞 “that” が省略されている。この “that” は、省略されている2番目の “a world” が関係代名詞 “that” になって前にきている。
think of (a world) as being led by more women: “as” 以下は、“as the world which is led by more women” が簡略化されていると考えられる。「より多くの女性によって導かれていると考えられる世界」の意。
続きは「シェリル・サンドバーグの英語❶|女性リーダーが少ない理由!TEDを解説」で。
5.2. ケリー・マクゴニガル/Kelly McGonigal
題名:「ストレスを友達にする方法」/ “How to make stress your friend”
スタンフォード大学で教鞭を執る健康心理学者。ストレスは捉え方により健康に害は全くないと主張している。ストレスに押し潰れそうなビジネスパーソンの皆様に是非トライして頂きたい。
I have a confession to make. But first, I want you to make a little confession to me. In the past year, I want you to just raise your hand if you’ve experienced relatively little stress. Anyone? How about a moderate amount of stress? Who has experienced a lot of stress? Yeah. Me too.
confession /kənféʃən/ (名) 告白
in the past year: 過去1年以内に
moderate /mɑ́dərət/ (形) ほどほどの
But that is not my confession. My confession is this: I am a health psychologist, and my mission is to help people be happier and healthier. But I fear that something I’ve been teaching for the last 10 years is doing more harm than good, and it has to do with stress. For years I’ve been telling people, stress makes you sick. It increases the risk of everything from the common cold to cardiovascular disease. Basically, I’ve turned stress into the enemy. But I have changed my mind about stress, and today, I want to change yours.
psychologist /saikɑ́lədʒist/ (名) 心理学者、精神分析医 ⇨ “health psychologist”「健康心理学者」。
I fear that 〜: 〜ではないかと心配している
something I’ve been teaching for the last 10 years: ここまでが “that” 節内の主語。“something” の後に、関係代名詞 “that” が省略されている。「私が過去10年間に教えてきたこと」の意。
do harm: 損害を与える
do good: 良いことをする ⇨ “do more harm than good”「良いことをするというよりも損害を与える」のニュアンス。
have to do with 〜: ~と関係がある
cardiovascular /kɑ̀ːrdiouvǽskjulər/ (形) 心臓血管の ⇨ “cardiovascular disease”「心疾患」。
the risk of everything (that is) from the common cold to cardiovascular disease: カッコ内の関係代名詞をbe動詞が省略されており、先行詞 “everything” を後ろから説明している。「通常の風邪から心疾患までの “everything”」の意。
続きは「ケリー・マクゴニガルの英語❶|ストレスは友達!TEDスピーチを徹底解説」で。
5.3. マイケル・サンデル/Michael Sandel
題名:「なぜ市場に市民生活を託すべきではないのか」/ “Why we shouldn’t trust markets with our civic life”
ハーバード大学教授で企業倫理の第一人者。子どもの教育などを例に、市場経済が現代社会に及ぼしている影響について語っている。お子様をお持ちのビジネスパーソンの方におすすめ。
Here’s a question we need to rethink together: What should be the role of money and markets in our societies? Today, there are very few things that money can’t buy. If you’re sentenced to a jail term in Santa Barbara, California, you should know that if you don’t like the standard accommodations, you can buy a prison cell upgrade. It’s true. For how much, do you think? What would you guess? Five hundred dollars? It’s not the Ritz-Carlton. It’s a jail! Eighty-two dollars a night. Eighty-two dollars a night. If you go to an amusement park and don’t want to stand in the long lines for the popular rides, there is now a solution. In many theme parks, you can pay extra to jump to the head of the line. They call them Fast Track or VIP tickets.
Here’s: “Here is 〜”「~は以下の通りです」
a question we need to 〜: “question” の後に関係代名詞 “that” もしくは “which” が省略されている。「我々が〜する必要がある “question”」の意。
rethink /riθíŋk/ (動) 考え直す ⇨ “re” は “again” の意味で「再び考える」の意。
there are very few things that money can’t buy: “few” は “a” がつくと「少しの〜」、 “a” がつかないと「ほとんどない」の意。 “that” は関係代名詞で “things” 以下は「お金が買えないもの」の意。全体では「お金が買えないものはほとんどない」の意。
If you’re (you are) 〜: “if” は接続詞で条件節を導く「もし〜ならば」の意。仮定ではない。
sentence /séntəns/ (動) (人に) 判決を下す ⇨ be sentenced to 〜: 〜の判決を下される。
jail /dʒéil/ (名) 拘置
term /tə́ːrm/ (名) 期間 ⇨ jail term 刑期
Santa Barbara: 米カリフォルニア州サンタ・バーバラ市
accommodation /əkɑ̀mədéiʃən/ (名) 収容設備
prison /prízn/ (名) 拘置所
cell /sél/ (名) 独房
upgrade /ʌ́pgrèid/ (名) (宿泊施設の部屋の) アップグレード
for /fər/ (前) ここでは「〜の金額で」の意。
guess /gés/ (動) 推測する
What would you guess?: “would” は婉曲表現で「〜だろう」の意。ここでは「あなたは何だろうと推量する?」の意。
amusement park /əmjúːzmənt/ /pɑ́ːrk/ (名) 遊園地 ≒ “theme park”「テーマパーク」
ride /ráid/ (名) 〔遊園地などの〕乗り物
stand in the long lines for the popular rides: 「人気の乗り物のための行列の中に立つ」から「人気の乗り物の列に並ぶ」の意。
extra /ékstrə/ (名) 追加料金
jump to the head of the line:「列の頭へとジャンプする」から「列の先頭に入る」の意。
fast track /fǽst/ /trǽk/ (名) 追加料金急行列車用線路(“track” (名) 線路) ⇨ ここでは「優先通路」。
続きは「マイケル・サンデルの英語❶|市場社会の問題とは!TEDスピーチを解説」で。
5.4. ジェイミー・オリバー/Jamie Oliver
題名:「子ども達に食の教育を!」/ “Teach every child about food”
イギリスの料理人。BBCの料理番組『裸のシェフ』で人気。肥満撲滅プロジェクトの経験を通して、子どもへの「食育」の重要性を語っている。「食」とイギリス英語に興味がある方におすすめ。
Sadly, in the next 18 minutes when I do our chat, four Americans that are alive will be dead through the food that they eat.
chat /tʃǽt/ (名) 雑談、おしゃべり ⇨ “do our chat”「おしゃべりする」
four Americans that are alive: ここまでが主語。“that” は関係代名詞で先行詞は “four Americans”。
through /θruː/ (前) ここでは「~によって」の意。
the food that they eat: “that” は関係代名詞で先行詞は “the food”。
My name’s Jamie Oliver. I’m 34 years old. I’m from Essex in England and for the last seven years I’ve worked fairly tirelessly to save lives in my own way. I’m not a doctor; I’m a chef, I don’t have expensive equipment or medicine. I use information, education.
Essex /ésiks/ (個名) エセックス(イギリス東部の旧州)
fairly /fέərli/ (副) かなり
tirelessly /táiərlisli/ (副) 休むことなく、辛抱強く
in my own way: 私なりのやり方で
chef /ʃéf/ (名) 料理人
equipment /ikwípmənt/ (名) 設備
I profoundly believe that the power of food has a primal place in our homes that binds us to the best bits of life. We have an awful, awful reality right now. America, you’re at the top of your game. This is one of the most unhealthy countries in the world.
profoundly /prəfáundli/ (副) 心から
primal /práiml/ (形) 主要な
bind /báind/ (名)(人を)結び付ける
bit /bít/ (名) 部分 ⇨ “the best bits of 〜”「〜の一番良い部分」
a primal place in our homes that binds us to 〜: “that” は関係代名詞で先行詞は “a primal place”。
awful /ɔ́ːfl/ (形) 恐ろしい
game /géim/ (名) ここでは「勝負」のニュアンス。 ⇨ “at the top of your game”「勝負の一番上に」
This is 〜: “This” は “America” を示す。
unhealthy /ʌnhélθi/ (形) 不健康な ⇨ “not” の意味を表す接頭辞 “un” + “healthy”
続きは「ジェイミー・オリバーの英語❶|子どもに食育を!TEDを徹底解説」で。
5.5. エイミー・カディ/Jamie Oliver
題名:「ボディランゲージが人を作る!」/ “Your body language may shape who you are”
ハーバードMBAコースで教鞭を執る社会心理学者。自信のない時でも、自信溢れるポーズをとることで自分自身を変えられると語っている。緊張すると力が発揮できないという方におすすめ。
So I want to start by offering you a free no-tech life hack, and all it requires of you is this: that you change your posture for two minutes. But before I give it away, I want to ask you to right now do a little audit of your body and what you’re doing with your body. So how many of you are sort of making yourselves smaller? Maybe you’re hunching, crossing your legs, maybe wrapping your ankles. Sometimes we hold on to our arms like this. Sometimes we spread out. (Laughter) I see you. So I want you to pay attention to what you’re doing right now. We’re going to come back to that in a few minutes, and I’m hoping that if you learn to tweak this a little bit, it could significantly change the way your life unfolds.
start by …ing: …することで始める
no-tech: テクノロジーではない
hack /hǽk/ (名) 道具 ⇨ “free no-tech life hack”「無料のテクノロジーではない人生の道具」。
all (that) it requires of you is 〜: 代名詞 “all” の後に関係代名詞が省略されており「“that” 以下の全てのこと/もの」の意。 “it requires (目的語) of you” 「それはあなたに(目的語)を要求する」の目的語 (“all”) が関係代名詞とともに前に来ている。全体では「それがあなたに要求する全てのもの・ことは」 の意。
that you (should) change 〜 : “all it requires of you is that you change 〜 ” と言い換えようとしたための “that”。主節の動詞が “require” のため “you” の後に “should” が省略されている。
posture /pɑ́stʃər/ (名) 姿勢
give 〜 away: 〜を与える、提供する
audit /ɔ́ːdit/ (名) 検査 ⇨ “do a little audit of 〜”「〜を少々調べる」。
and (do a little audit of) what you’re doing with your body: “and” の後にカッコ内が省略されている。“what” は先行詞を含む関係代名詞で「〜のこと/もの」。全体では「そして、あなたがあなたの体でしていること(を少々調 べる)」の意。
sort of: (口語)多少、いくらか、幾分、ある程度
hunch /hʌ́n(t)ʃ/ (動)(背などが)丸くなる、猫背になる
cross one’s legs: 脚を組む
wrap /rǽp/ (動) ~を包む
hold on to 〜: ~をつかんで離さない、〜を持ち続ける
spread out:(群動)広げる
tweak /twíːk/ (動)(機能を改善するために)微調整/マイナーチェンジす る
unfold /ʌnfóuld/ (動) 展開する ⇔ “fold” (動) 折りたたむ
続きは「エイミー・カディの英語❶|ボディランゲージが人を作る!TEDを徹底解説」で。
5.6. スティーブ・ジョブズ/Steve Jobs
TEDではないが、全ての方にお勧めしたいスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを紹介する。単語と文法に加え、発音も詳細に解説している。オリジナル画像はこちら。
アップル創業者。2005年スタンフォード大学の卒業生に向けてのメッセージ。自らの生立ちや闘病生活を通して、自らの人生観を語っている。仕事について悩んでいる方におすすめ。
Thank You. I am honored to be with you today for your commencement from one of the finest universities in the world. Truth be told I never graduated from college and this is the closest I’ve ever gotten to a college graduation. Today I want to tell you three stories from my life. That’s it. No big deal. Just three stories.
honor /ɑ́nər/ (動) 光栄と感じさせる ⇨ be honored to 〜: 〜して光栄です
commencement /kəménsmənt/ (名) 卒業式: 動詞commence /kəméns/ は「始まる」の意。その名詞「始まり」から「卒業式」の意。
truth be told: 「真実は語られる」から「実を言うと」の意。
I (have) never graduated 〜: 現在完了形の “have” が省略されている。
this is the closest I have ever gotten to a college graduation: “this” は「この場」のこと。 “the closest” は「一番近いところ」の意。次の “I” 以下がどのような「一番近いところ」かを説明している。 “closest” の後に “place where (関係副詞)” を入れると理解しやすい。 “get to 〜” は「〜に到達する」。「経験」を表す現在完了形で、全体の意味は「この場所は、私が今までに大学の卒業式というところに到達した一番近いところ」
that’s (that is) it: 「ただそれだけです」の意。“that’s (that is) all” と同じ意。口語では良く使用される。
deal /díːl/ (名) 取引 ⇨ no big deal: 「大きな取引ではない」から「大したことはない」の意。
The first story is about connecting the dots. I dropped out of Reed College after the first 6 months, but then stayed around as a drop-in for another 18 months or so before I really quit. So why did I drop out? It started before I was born. My biological mother was a young, unwed graduate student, and she decided to put me up for adoption. She felt very strongly that I should be adopted by college graduates, so everything was all set for me to be adopted at birth by a lawyer and his wife.
connect /kənékt/ (動) ~をつなぐ
dot /dɑ́t/ (名) 点
drop out of 〜: 「〜から落ちる」から「~から中退する」の意。 “out of” = “from”
Reed College: ジョブズが中退したリード大学
stay around: 「周りにとどまる」から「うろうろする」の意。
drop-in: “drop in 〜” は動詞句で「〜 の中に落ちる」から「〜に立ち寄る」の意。名詞の “drop-in” は「立ち寄る人」から「大学の聴講者」(正規の学生ではない)の意。
〜 or so: 「〜もしくはそれくらい」から「〜かそれくらい」の意。
quit /kwít/ (動) やめる
biological /bàiəlɑ́dʒikl/ (形) 生物学の: “biological mother” は「生物学上の母」から「産んでくれた母親」
unwed /ʌ̀nwéd/ (形) 未婚の: “wedding” の “wed”。 “un” は否定の意。
graduate student: 大学院生: 大学生は “undergraduate student”
adoption /ədɑ́pʃən/ (名) 養子縁組 ⇨ adopt /ədɑ́pʃən/ (動) 養子にする
put me up for adoption: “put 〜 up” もしくは “put up 〜” は「〜を上へ置く」の意。全体の意味は「私を養子縁組のために上へ置く」から「私を養子縁組に出す」の意。
graduate /grǽdʒuət/ (名) 卒業生
be all set to 〜: 「〜するために完全に整えられる」の意。: “all” は副詞で「完全に」の意。
at birth: 「生まれた時に」の意。
everything was all set for me to be adopted at birth by a lawyer and his wife: “for me to be adopted” は「私が養子に出される」の意。 “to”不定詞の主語は “for 〜” で表す。全体の意味は「私が生まれた時に、弁護士夫妻に養子に出されるよう全てが完全に整っていた。」の意。
このスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションのみ、発音についても解説する。主に音声変化とリズム、イントネーションについて説明しているので参考にして頂きたい。
Thank You. I am honored to be with you today for your commencement from one of the finest universities in the world. Truth be told I never graduated from college and this is the closest I’ve ever gotten to a college graduation. Today I want to tell you three stories from my life. That’s it. No big deal. Just three stories.
I am honored to be with you today for your commencement from one of the finest universities in the world: この文では、意味的に重要な単語 (オレンジ色) が強くゆっくりめに発音されている (オレンジ色の単語の太字の部分がアクセントの位置)。逆にそれ以外の部分 (黒字) は弱く早く発音されているため、我々日本人にとって非常に聞き取りづらい。
honored to: “honored” の “d” は破裂されずに脱落し発音されていない。次の “to” の “t” との連結と考えることもできる。全体では「オーナートゥ」のように変化。
commencement from: “commencement” の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。
one of: “one” と “of” が連結して「ワノヴ」 に変化。
finest universities: “finest” の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。
graduated from: “graduated” の最後の “d” は破裂されずに脱落し発音されていない。
gotten to: “gotten” の “tt” は破裂されずに、脱落気味に「ウン」と飲み込むように発音されている。
want to: 口語では通常 “wanna” /wɑ́nə/「ワナ」と発音される。
from my: “from” の “m” が脱落して発音されていない。次も “my” の “m” が来るため。
That’s it: “That’s” の “s” と “it” の “i” が連結、そして “it” の “t” は破裂されずに脱落して「ザッツィッ」のように変化。
big deal: “big” の “g” は破裂されずに脱落し発音されていない。次も破裂音の “d” が来るため。
Just three: “just” の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。
The first story is about connecting the dots. I dropped out of Reed College after the first 6 months, but then stayed around as a drop-in for another 18 months or so before I really quit. So why did I drop out? It started before I was born. My biological mother was a young, unwed graduate student, and she decided to put me up for adoption. She felt very strongly that I should be adopted by college graduates, so everything was all set for me to be adopted at birth by a lawyer and his wife.
first story: “first” の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。更に “first” の “s” が “story” の “s” と重なり脱落気味に。結果「ファーストーリー」のように発音されている。
is about connecting the: “is” の “s” と “about” の “a” が連結、そして “about” の “t” が脱落して「イザバウ」のように変化。 次の “connecting” の “g” は破裂されずに脱落し発音されていない。
dropped out of: “dropped” の “d” と “out” の “o” が連結して、そして “out” の “t” と “of” の “o” が連結して「ドゥロップタゥトヴ」のように変化。
Reed College: “Reed” の “d” は破裂されずに脱落し発音されていない。
first 6 months: “first” の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。
but then: “but” の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。
stayed around as a drop-in: “stayed” の “d” と “around” の “a” が連結、“around” の “d” と “as” の “a” が連結し、更に “as” の “s” と、次の “a” も連結して、全体で「ステイダラウンダザ」のように変化。“drop” の “p” と “in” の“i” が連結して「ドゥロッピン」のように変化。
did I: “did” の “d” と “I” が連結して、そして破裂させていないため「ディライ」のように変化。“d” は、破裂させずに “l (エル)” (ラリルレロ) の音に変化することがある。 “d” と “l” の舌先の位置が同じため。
drop out: “drop” の “p” と “out” の “o” が連結、そして “out” の “t” が脱落して「ドゥロッパゥ」と変化。
It started before: “it” の “t”、“started” の “d” が破裂されずに脱落し発音されていない。また、“started” の 2つ目の “t” が破裂させておらず「れ」と発音され「イッスターレッ」のように変化。 “t” は、破裂させずに “l (エル)” (ラリルレロ) の音に変化することも多い。 “t” と “l” の舌先の位置が同じため。例えば “little”「リル」など。
My biological mother was a young, unwed graduate student, and she decided to put me up for adoption: 意味的に重要な単語 (オレンジ色) が強くゆっくりめに発音され (オレンジ色の単語の太字の部分がアクセントの位置)、逆にそれ以外の部分 (黒字) は弱く早く発音されている。強く発音するときとは異なって発音されている単語もある。例えば、 “was” は強く発音される場合は /wʌ́z/ だが、ここでは弱く /wəz/ と発音されている。通常母音は、弱く発音されると全て /ə/ となる。
was a: “was” の “s” と “a” が連結して「ワザ」のように変化。
unwed graduate student: “unwed” の “d” と “student” の最後の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。
put me: “put” の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。
that I: “that” 最後の “t” と、次の “I” が連結して、そしてその “t” は破裂されずに “l (エル)” (ラリルレロ) の音に変化しているため、「ザ(ダ)ライ」のように変化。
should be adopted by: “should” の “d” と “adopted” の 2つ目の “d” は破裂されずに脱落し発音されていない。
was all: “was” の “s” と “all” の “a” が連結し、そして “all” の “ll” が脱落気味で「ワゾー」のように変化。
at birth: “at” の “t” は破裂されずに脱落し発音されていない。
and his: “his” の “h” が脱落し、前の “and” の “d” と連結し「アンディス」のように変化。
単語と文法の解説の続きは「スティーブ・ジョブズの英語❶|スタンフォード卒業式スピーチを徹底解説」で。
発音の解説の続きは「スティーブ・ジョブズの発音①|スタンフォード卒業式スピーチを徹底解説」で。
6. TEDで英語学習|まとめ
- TEDは最強の英語教材だ。しかし、TEDで英語学習を始める前に基礎力を強化すること! 自分のレベルや目的に合ったTEDを選ぶこと!TEDの日本語訳は見ないようにすること!
- リスニング力とリーディング力を強化するためには、①発音矯正、②英語脳の構築、③単語・文法・英語表現の習得、の3つを目標にしよう。22の自動化トレーニングを組み合わせて効率よく強化していこう!
- TEDを使ってスピーキング力とライティング力も強化しよう!トレーニング方法は、①リフレージング、②サマライジング、③ショートスピーチ、と3種類ある。是非、あなたの英語学習に取り入れて頂きたい。
- TEDを英語学習に活用するメリットは数多くある。一方で、自分の英語学習に適したプレゼンを探すことが大変でもあり、未知の単語や文法は自分で調べる必要があるというデメリットもある。
- The English Clubでは、日本人の英語学習者にお勧めのTED5つ(及びおまけ1つ)を、詳細な単語・文法解説(及び、おまけには発音解説)と共にBlogにアップしている。是非あなたの英語学習に役立てて頂きたい。
『英語独学完全マニュアル』
独学で効率的に習得する科学的学習法の全て(全79ページ)
英語は独学が基本です。しかし、「自分の学習方法が正しいかどうか…」不安に思っていませんか?本書は、英語の学習方法についてお悩みの皆さまに、第二言語習得研究と脳科学(神経科学)研究の知見に基づいた真に効率的な英語学習法をご紹介する解説書です。
無料eBookの主な内容
- 単語・文法・発音の効率的な基礎力強化方法
- インプット(読む・聞く)能力向上のための英語脳作りトレーニング法
- アウトプット(話す・書く)能力向上のためのリハーサル・トレーニング法
- 学習計画の立て方と効率性を上げるための学習習慣
そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。