英単語には覚え方がある。結果を出すためにはぜったいに注意すべきこともある。効率的に覚えたいなら学習習慣にも気を配るべきだ。そして、続けるなら学習計画を立てよう。
約束する。この記事に書いてある英単語の覚え方を実践すれば、目標の英単語力は必ず最速で手に入る。そしてそのあかつきには、もっと早く実践すればよかったと思うだろう。
もう漫然と英単語集をながめるだけの覚え方はやめよう。あなたの貴重な時間と労力を無駄にするだけだ。本気のあなた。さあ、始めようか。
目次
1. 英単語の覚え方|ぜったいの基本トレーニング法8選
英単語の覚え方は単純だ。それは「目」「耳」「口」「手」を使って様々なトレーニングを繰り返すこと以外にない。しかし、やり方を間違えると非効率になり、必要以上に時間がかかってしまう。The English Clubでみんなが実践し、結果を残してきたトレーニング方法をご紹介しよう。
英語を習得するためのトレーニング方法は色々ある。上の図がそれら22の方法をまとめたものだ。The English Clubではこれらを「自動化トレーニング」と呼ぶ。覚えるためだけのトレーニングではなく、覚えた知識を「自動的」に使えるようにするためのトレーニングだからだ。
英単語を効率的に覚えるために必要なのは、あらゆる方向から脳を刺激してやることだ。「目」「耳」「口」「手」を使って脳を刺激してやれば、ただ読む(目)だけよりも格段に記憶に定着しやすくなる。そして、とくかく繰り返すことだ。英単語に限らず、スポーツや楽器、ゲームなど、何かを自分のものするためには繰り返すことが最も重要なのだ。
さあ、本題の英単語の覚え方に入ろう。22のトレーニング方法の中から英単語学習におすすめのトレーニング法をご紹介する。
聞き取りから書き取りまで、英単語学習用に8つピックアップした。それぞれ単独でやっても効果はあるが、効果が異なるので、下の図のように順を追ってトレーニングするとより効果的だ。順番に説明しよう。
1.1. 聞き取り(Listening)
単語集を見ないで集中して音源を聴いて欲しい。見出し語と例文を聴いてどれくらい理解できるか確かめよう。聞き取れない場合は2〜3回聴いてみよう。なお、2回目からはこの聞き取りは省略してもよい。
1.2. アイ・シャドーイング(Eye-shadowing)
単語集の見出し語と例文を目で追いながら音源を聴く。意味はもちろんだが、発音とアクセントの位置を意識しながら繰り返し聴いてみよう。なお、2周目からはこのアイ・シャドーイングは省略してもよい。
1.3. 音読(Reading aloud)
見出し語を、意味・発音・アクセントの位置を意識しながら大きな声で音読しよう。次に、例文を音読しながら意味と文の構造(文法)を確認しよう。わからないところは辞書や文法書で確認すること。その後、例文を意味と発音を意識しながらスムーズに音読できるまで繰り返し練習しよう。発音に不安がある場合は、アイ・シャドーイングに戻って確認すること。
なお、音読の効果ややり方についての詳細は「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」も参考にして欲しい。
1.4. オーバーラッピング(Overlapping)
例文を目で追いながら、そして音源を聴きながら、音源にぴったり重ねるように発音してついていこう。声を出せないところでは、口パク(リップシンク)でもOK。スピードについていけるようになるまで繰り返し練習しよう。スピードについていけるようになったら、細かい発音や意味も意識しながら繰り返し練習しよう。
なお、このオーバーラッピングは、2周目以降、シャドーイングがうまくできるようになったら省略してもかまわない。
1.5. ルックアップ&セイ(Look-up & say)
例文を1文黙読した後、顔を上げて(ルックアップ)暗唱(セイ)してみよう。慣れてきたら意味と発音を意識して何度も練習しよう。発音があいまいな場合はアイ・シャドーイングを再度やってから、意味や文の構造があいまいな場合は再度確認してから繰り返し練習すること。
なお、このルックアップ&セイは、2周目以降、シャドーイングがうまくできるようになったら省略してもかまわない。なかなかシャドーイングができない場合は、このルックアップ&セイやオーバーラッピングに戻って練習してから再度シャドーイングに挑戦してみよう。
1.6. リピーティング(Repeating)
単語集を見ないで見出し語の音源を聴き、その後すぐに声を出してリピートしよう。例文も単語集を見ないで1文を聴き、音源を止めてリピートする。必ず意味を意識して行うこと。意味を意識してできるようになったら、今度は発音を意識して音源とそっくりにいえるようになるまで繰り返そう。難しい場合はルックアップ&セイに戻ること。
1.7. シャドーイング(Shadowing)
単語集を見ないで音源を再生し、2語程度遅れて影のように声を出して追っかけていこう。見出し語も例文も、必ず意味を意識しながら行うこと。スピードについていけない場合はオーバーラッピングに戻ること。意味を意識しながらスピードについていけるようになったら、今度は発音を意識しながら何度も繰り返そう。
なお、シャドーイングの効果ややり方についての詳細は「英語のシャドーイング|4種類のやり方と効果&6のコツを徹底解説!」も参考にして欲しい。
1.8. <おまけ> 書き写し(Transcribing)
例文を1文黙読した後、その1文を一気に書き写そう。途中でチラチラと英文を見ないように。どうしても覚えられない場合は、黙読ではなく音読すると覚えやすいはずだ。音読すると自分の声を聞くことになる。目よりも耳の方が短期記憶に強いのだ。
スペルがわからない場合もあるだろう。その場合もチラチラと見ずに積極的に間違ってみよう。間違えば間違っただけ記憶に残るので正確なスペルが覚えられる。スペルが苦手な方におすすめのトレーニングだ。
1.9. トレーニングは6回以上繰り返すこと
トレーニングは6回以上繰り返すことが理想だ。上の図の7つの工程を全て6回繰り返す必要はない。この中では音読とシャドーイングの2つが最も重要だ。2周目、3周目と進んで、だいぶ慣れてきたら他のトレーニングはやらなくてよい。この2つに集中して繰り返しトレーニングしよう。
なお、上の図では「書き取り」は除いてある。スペルが苦手な方は書き取りも組み入れてほしい。その場合はルックアップ&セイの後がよいだろう。
なぜ6回か?覚えたい単語が文中に登場する回数と学習成果の関係を調べた言語学者の研究によると、単語の登場回数が6回以上では明らかに効果が違ったそうだ。最初と2周目、2周目と3周目などの復習の間隔については、ドイツの心理学者エビングハウスの実験が参考になる。下記の 3.「英単語の覚え方|効率的に覚えるための6つの学習習慣」を参照してほしい。
2. 英単語の覚え方|理解できる単語を使える単語にする方法
「単語は覚えたので読んだり聴いたりすれば理解できる。でも話すときにその単語が出てこない。」こんな経験は誰にでもあることだ。
このようなことが起こるのは、その単語が「理解できる単語」にはなったが、「使える単語」になっていないことが原因だ。言語学の世界では、「理解できる単語」は「認識語彙/Passive Vocabulary」、「使える単語」は「運用語彙/Active Vocabulary」という。
2.1. 理解できる英単語を使える英単語にする方法
理解できる英単語を使える英単語にする方法については、すでに皆さんは知っているはずだ。上記で説明した「自動化」トレーニングだ。紹介した8つのトレーニングの中には、単語を使えるようにするのに有効なトレーニングも含まれている。ルックアップ&セイ、書き写し、リピーティング、シャドーイングだ。
- ルックアップ&セイとリピーティング、書き写しは、英文を見て、もしくは聞いて理解し、直ぐに声に出して(書き写して)再生しなければならないため、日本語に変換するひまがなく、英語を英語のまま、英語の語順で理解する能力が向上する。つまり単語・文法知識が自動化される。
- シャドーイングは、音源を聞いて意味を瞬時に理解し、ルックアップ&セイやリピーティングなどよりも早く繰り返さなければならないため、単語・文法知識の自動化がさらに促進される。
使える英単語にするにはアウトプット・トレーニング(話す・書く)も必須だ。覚えようとしている単語を意識して使う(アウトプットする)ことで記憶も強化される。使えるようにしたい単語は、その単語を使って作文してみよう。単語集の問題を解くこともアウトプットになる。
2.2. 使える英単語は理解できる英単語より少なくてよい!
理解できる英単語を全て使えるようにする必要はない。まずは最重要語2,000語を使える単語にすることを目標にしよう。最重要語以外は理解できるだけでよいと割り切り、英単語の覚え方にメリハリをつければ学習を効率化できる。
日本人として、読める(理解できる)けど書けない(使えない)漢字は誰にでもある。英語でも、理解はできるが使えない単語があっても当たり前なのだ。例えばTOEICで730点を取るには3,000語の単語を知っている必要があるという統計があるが、その全ての単語を使えるようにする必要はない。最低2,000語を使えれば自分自身を自由に表現できると主張する言語学者も多い。
なお、覚えるべき単語数については「英語の単語数は2000語で80%!数より質で効率的に単語力アップ」で詳細を紹介しているのでこちらも是非読んでほしい。英単語の覚え方の参考になるはずだ。
3. 英単語の覚え方|単語集選びの6つの注意点とおすすめ6選
単語集選びは非常に重要だ。単語レベルと目的が合っているかどうか。効率的に学習するために必要な情報が提供されているかどうか。これらの点に注意して慎重に選ぼう。
3.1. 英単語集を選ぶ際の6つの注意点
トレーニングに使用する英単語集を選ぶ際には下記の6つの点に注意しよう。
- あなたのレベルに合っていること:
単語集のレベルの選択は出発点として一番重要なことだ。まずは自分の単語レベルを知らなければ、自分に最適な単語集は選べない。その確認方法については、下記4.「英単語の覚え方|続けるために必要な学習計画の立て方」を参照してほしい。 - あなたの覚えるべき単語が掲載されていること:
あなたが必要とする単語が掲載されている単語集を選ぼう。英語を使うようになっても、1年に1度しか出会わないような単語を一生懸命覚えることは非効率だ。単語集を選ぶ際は、掲載している単語の選定基準をしっかりと確かめよう。覚えるべき英単語については「英語の単語数は2000語で80%!数より質で効率的に単語力アップ」に詳しくご説明しているので参考にしてほしい。 - 例文が掲載させていること:
効率的な覚え方を追求するなら、英単語は例文で覚えることが必須だ。英単語だけではなく、その使い方(コロケーション(語彙の自然なつながり)など)も同時に覚えられるからだ。自分が使いそうな例文が多く含まれたものであれば、定型表現として覚えられるので理想的だ。 - 音声が収録されているCD(もしくはダウンロード)があること:
耳を使ったトレーニングは英単語の覚え方の基本だ。見出し語と例文の音声が入っているものがいいだろう。見出し語の日本語訳も収録されていると単語集を開かなくても、聞くだけで意味を覚えられる。 - 発音記号が掲載されていること:
日本人は英語の発音が苦手だ。英語には日本語にはない発音が多くあるからだ。発音が苦手だとリスニング力も向上しない。英単語の効率性な覚え方を追求するなら発音記号を意識しよう。発音記号についてはの詳細は「英語の発音記号|日本人が苦手な母音と子音を14のコツで矯正しよう」を参考にしてほしい。 - 派生語・関連語がなるべく多く掲載されていること:
例えば「inform(動詞)知らせる」であれば、「information(名詞)情報」や「informative(形容詞)有益な」も一緒に覚えた方が効率的だ。最新の脳科学(神経科学)研究では、人間の脳はものごとをお互いに関連づけると覚えやすくなるという。数多くの事象が次々と神経回路の中でつながれば記憶力がどんどん増強されるのだ。
3.2. おすすめ英単語集5選 + 1
The English Clubがおすすめする英単語集を6つご紹介しよう。上記の6つの注意点をクリアしている単語集ばかりだ。
なお、おすすめ英単語集については「【英単語帳】社会人におすすめは?人気の23冊を徹底検証!」も参考にしてほしい。
DataBase1700使える英単語・熟語3rd Edition[桐原書店]¥850+税
中学1年〜高校1年で実際に使用している教科書から最重要語を掲載している。中学英語からおさらいしたい方向け。最重要語ばかりなので、ちょっとでも不安な方はここから始めることをオススメする。DataBaseシリーズ4つのうちの初級者用。
DUO select[アイシーピー]¥1,140+税
「DUO 3.0」の中から重要単語1000語と熟語600語をピックアップし掲載。英検2級レベルを目標とする方向け。TOEIC/TOEFLの基礎学習用。CDと合わせると4千円以上と高い。内容や使い方についての詳細は、「DUO select|英単語教材としての内容・やり方・効果を徹底検証」を参考にしてほしい。
改訂版 キクタン【Basic】4000[アルク]¥1,400+税
アルクが独自に選定した4000語レベルのBasic語彙から見出し語で1,120語を掲載。TOEIC600点レベルが目標の方向け。音源がリズムに合わせた「チャンツ」形式になっているので好き嫌いがある。「Basic」のほかに「Entry」「Advanced」「Super」と4つのレベルがある。
DUO 3.0[アイシーピー]¥1,200+税
2大英英辞典の基本定義語とほぼ一致しているという見出し語1,572語と熟語997を掲載。TOEIC780点レベル、英検準1級レベルが目標の方向け。CDと合わせると4千円以上と高い。内容や使い方についての詳細は、「DUO 3.0|英単語教材としても内容・やり方・効果を徹底検証」を参考にしてほしい。
Business Vocabulary in Use[Cambridge University Press]¥3,600程度
ビジネスの様々な状況でよく使用される語彙や表現を学習するための教材。「Elementary to Pre-intermediate」「Intermediate」「Advanced」の3レベル。良い教材だが、音源がないのである程度発音を習得した中級者以上向け。
「JACET8000英単語」(桐原書店)¥2,000+税
膨大な言語データベースから、主に使用頻度をもとに選定した8,000語を、使用頻度順に掲載している。自分のレベルの確認や覚えるべき単語を確認するのに役立つ。音源がないのでトレーニング用ではない。
4. 英単語の覚え方|必ず結果を出すための13の注意点
英単語を覚える際の13の注意点をご紹介したい。全て科学的な見地(第二言語習得研究もしくは脳科学(神経科学)研究)から指摘されていることだ。結果が大きく変わるほど重要なことばかりなのでじっくりと読んでほしい。
4.1. 英単語は最重要語(1000〜2000語)をあなどらないこと!
中学では約1,100語、高校では約2,000語の英単語を最低でも学習する。特に中学で習う1,100語は、今後一番よく出会う最重要語だ。それらの最重要語はあなどらないで「深く」学習する必要がある。
最重要語2000語で通常80%以上をカバーできる。英語に触れる機会が増えてくると、最重要語には何度も出会うことになる。しかし毎回同じ意味や使われ方では出てこない。例えば、「make」は「作る」だが、「行う」「引き起こす」「進む」などの意味にもなる。「make out/うまくやる」「make up/化粧する」など、前置詞や副詞とつくことで色々な意味に派生する。最重要語は深く学習しないと全く意味がないのだ。
4.2. 英単語は発音記号とアクセントの位置を意識すること!
発音記号を知っていれば、実際にその音を聞かなくても、日本語にはない英語の音の発音方法とアクセントの位置が理解できる。そして、その後の学習を効率的にしてくれる。
英語は日本語より発音の数が多いので、日本人には正確に発音することがむつかしく、そのためネイティブ・スピーカーに理解してもらえない。発音できない音は聞き取れないのでリスニング力も向上しない。また、英単語のアクセントの位置を間違って発音すると理解してもらえない可能性が高くなる。発音記号の知識があればコミュニケーション力を効率的にアップすることも可能なのだ。
4.3. 英単語は聴いて覚えること!
英単語は、目で覚えるよりも耳で覚える方がより効率的である。脳科学研究では、人間は進化の過程で目よりも耳を良く活用してきたので、耳の記憶は目の記憶よりも強く心によく残るといわれているのだ。加えて、聴くことにより発音とアクセントの位置も同時に覚えることができる。
4.4. 英単語は発音して覚えること!
英単語はなるべく正確に発音できるように声を出して練習しながら覚えよう。必ず音源がある単語教材を使用して欲しい。発音は唇・舌・喉・顎・肺の動かし方が重要だ。それら5つの動きと、発音記号・アクセントの位置を意識して、なるべく音源とそっくりに発音できるようになるまで繰り返し練習することだ。
自分で正確に発音できるようになると、脳がその音を「音」と認識してくれるのでリスニング力も向上する。加えて、声を出して発音することは自分の声を「聴く」ことにもなるので記憶にも定着しやすい。
4.5. 英単語は例文を聞き、音読し、書き写して覚えること!
英単語は例文で覚えた方が圧倒的に効率的だ。単語の意味だけでなく、文中での使われ方 (前後にどのような単語がくるかなど/コロケーション) も覚えられる。コロケーションの知識はその単語を自分で使う時(話すときなど)に絶対に必要となる。
例文で覚えることが効率的なのは脳科学でも証明されている。ものごとをお互いに関連づければ覚えやすくなるというのがシナプス(神経回路)の性質だからだ。
音読と書き写しが効率的である理由は「目」「耳」「口」「手」を使うからだ。これは 1.の基本トレーニング8選のところで既に説明した。
4.6. 英単語は派生語・関連語・語形変化を意識すること!
英単語を覚えるときに派生語・関連語を意識すべきことは既に指摘した。語形変化を意識することも忘れないでほしい。これらも、ものごとをお互いに関連づけることになるので、脳科学的にも効率的な英単語の覚え方だ。
派生語とは、例えば「create」では、「creation」「creative」「creativity」などがある。関連語とは、例えば「winter」では「summer」「fall」「spring」「sunny」「windy」「cloudy」「rainy」などがある。語形変化とは、動詞の活用形のことをいう。例えば、規則変化では「live-lived-lived」、不規則変化では「fly-flew-flown」や「go-went-gone」などのことだ。
4.7. 英単語は語源を意識すること!
語源を意識することは、単語と単語を関連づけることになるので、脳科学的観点からも効率的な英単語の覚え方だ。加えて、語源を知っていると知らない英単語の意味を想像しやすくなるので非常に応用が効く。最重要語をマスターした後にチャレンジしてもらいたい。
語源とは、ある単語がその形や意味で使われるようになるに至った、もとの形や意味のことだ。例えば、英単語「port(港)」のもともとは「運ぶ」という意味だった。それに「中に」という意味の「im(in)」がついて「import(中に運ぶ→輸入)」となり、「外に」という意味の「ex」がついて「export(外に運ぶ→輸出)」になった。
下の表にあるように、その他にも「portable」「porter」「transport」など、「port」つながるの単語はまだまだある。このような「in」「ex」「port」などの単語の「部品」が語源だ。
なお、語源初心者の方は「英語の語源|初心者が最初に覚えるべき10の語根と10の接頭語・接尾語」を参考にして頂きたい。
4.8. 英単語は中核のニュアンスをつかむこと!
語彙習得の第一人者であるビクトリア大学(ニュージーランド)のポール・ネーション教授は、1つの単語で複数の意味や訳語がある場合は、すべてに共通する中核的なニュアンスを意識すべきだと指摘している。
例えば、「base」には「土台」「根拠」「中心地」「基地」「野球の塁」などの訳語があるが、「基軸となる場所」という共通するニュアンスを持つことができれば、それらの訳語を全部覚える必要はなくなる。そのニュアンスを理解していれば、文脈から訳語を想像できるようになるからだ。それこそがネイティブ・スピーカーの持つ、その単語に対する感覚なのだ。
4.9. 英単語はやさしい英文を多く読み・聴いて覚えること!
多く読むこと(多読)と多く聞くこと(多聴)は言語を習得する上での基本となる。日本人が英語ができない理由の一つとして、インプット(読むこと・聞くこと)が圧倒的に足りないことを指摘する言語学者は多い。
多読・多聴は、最重要単語の色々な意味、様々な使われ方を知ることができ、深く学ぶことにつながる。そして、単語の意味だけではなく、文中での使われ方(コロケーション)や文法項目も同時に覚えられる。そして、それらを無意識的に理解する能力 (自動化) も向上できる。
使用する素材は、知らない単語、文法・構文が本全体の2〜3%程度含まれたやさしい英文にしよう。第二言語習得研究から、そのような英文を多読・多聴することは、前後関係から類推することにより新たな単語や文法に関する知識も習得することができるといわれている。
4.10. 知らない英単語は意味を想像しながら読むこと!
多読・多聴の際、知らない単語があってもいちいち辞書を引かずに、前後関係や語源などから意味を想像しながら読もう。それを繰り返していると徐々にその単語の中核的なニュアンスを理解できるようになる。ただし、その単語の正確な意味が理解できないとストーリーを追えない場合は意味を調べることをお薦めする。
4.11. 英英辞典を活用すること!
英英辞典を使うことは日本語を介さないで英語を英語のまま理解することにつながる。また、訳語が沢山ある英単語の中核的なニュアンスをつかむことにもつながる。
英語力が向上していくと英単語を日本語の訳語で覚えることの弊害がでてくる。我々英語学習者の究極の目標は英語を英語のまま理解し、英語で考えそのまま英語で表現することだ。いちいち日本語に訳して理解したり、日本語で考えたことを頭の中で英語に訳していたらスムーズな会話はできっこない。英単語を日本語で覚えていると、その「訳す」くせから抜けられなくなる。
TOEICで730点以上とったら、ネイティブ・スイーカーが持っているニュアンスを獲得していくために、英和辞典は卒業して英英辞典を使おう。
4.12. 英単語は自分で使ってみること!
英単語は、何度も読んだり聞いたり(インプット)するより、自分で使ってみる(アウトプット)方が記憶に定着しやすい。この脳の性質は脳科学の世界では常識だ。
最重要語など、使える単語(運用語彙)にする必要がある場合は、例文を暗唱したり、その単語を使って英作文したり、問題を解くなどのアウトプットを繰り返そう。
4.13. 群動詞は個々の単語の意味から推測しながら覚えること!
群動詞(もしくは「句動詞」)とは、「動詞+副詞」または「動詞+前置詞」や「動詞+副詞+前置詞」の形で、まとまって1つの動詞のような働きをする「熟語」だ。動詞単体とは違う色々な意味になるので覚えるのが大変だが、個々の単語の意味からその群動詞の意味を推測しながら覚えることをオススメする。
例えば「stand out」は「目立つ」という意味だが、「stand」は「立つ」、「out」は「外」で、「外に立つ」から「目立つ」と推測しながら覚えると記憶に定着しやすくなる。
5. 英単語の覚え方|効率的に覚えるための6つの学習習慣
英単語の覚え方を語る上で脳の性質を無視することはできない。最近の脳科学(神経科学)研究により、人間の脳の記憶のプロセスは解明されているところも多い。脳の性質を理解して効率的に英単語を習得しよう。
5.1. 英単語の学習は毎日すること
毎日学習することが英単語の効率的な覚え方の基本だ。学習と学習の間に睡眠を入れることで記憶が強化されることが脳科学で立証されている。
人間の脳は、寝ている間に記憶を整理整頓する。それによって学習した時点では理解できなかったことが、整理整頓されたおかげで後になって理解できるようになることがある。学習したことが睡眠後に高度化するという現象だ。これは1日6時間まとめて学習するよりは、2時間ずつ3日にかけて学習した方が途中に睡眠が入るため、その間に記憶が整理整頓され効率的に習得できるということだ。
5.2. 英単語を学習した日は6時間以上の睡眠をとること
効率的な英単語の覚え方をとことん追求したいなら、毎日6時間の睡眠を確保することを心がけよう。
何か新しい知識や技法を身につけるためには覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせないという研究結果が、米ハーバード大学の精神医学者スティックゴールドにより2000年に発表されている。睡眠をせずに詰め込んだ記憶は、情報の貯蔵庫である側頭葉に刻み込まれることなく数日のうちに消えてしまうのだ。
5.3. 英単語の学習は寝る前15分を活用すること
脳は睡眠の直前に取り込んだ情報を中心に処理するため、15分でもいいので寝る直前に学習の時間を確保するのが最も効率的な英単語の覚え方だ。
脳神経外科専門医の築山氏は、夜の学習はざっと中途半端にやり、寝ている間の脳の整理力を活用し、睡眠時間を十分にとり、起きてから整理・熟考することが合理的だと指摘している。夜は特に単語を覚えることを薦めている。
5.4. 英単語の復習は徐々に間隔を広げながら6回行うこと
英単語に限らず、英語の学習の基本は繰り返し(復習)である。様々な研究結果を総合すると、効率的な復習は、最初に学習した時から徐々に間隔を広げながら6回行うことだ。
脳科学(神経科学)の専門家である東京大学の池谷准教授によると、ドイツの心理学者エビングハウスの研究から、もっとも能率的な復習スケジュールは、まず1週間以内に一回目、次にその復習から二週間後に二回目、そして最後に、二回目の復習から一ヶ月後に三回目と、一回の学習と三回の復習を少しずつ間隔を広くしながら二ヶ月かけて行うことだという。
また、覚えたい単語が文中に登場する回数と学習成果の関係を調べた研究によると、6回以上であきらかな効果が出たという報告もある。
5.5. 英語・英単語に好奇心と探究心を持つこと
英語と英単語に好奇心と探究心を持って意欲的に取り組むことが英単語を効率的に覚える秘訣である。
スウェーデンの神経生理学者のブリスとレモは脳内にθ波を発生させれば記憶力が向上することを明らかにしている。θ波を発生させられるもっとも効果的な方法は覚えたいことに興味を持つことだ。「好奇心」と「探究心」が記憶にとって重要なのだ。
5.6. 英単語を習得するには学習の初期段階で絶対に諦めないこと
英単語に限らず、物事の習得でもっとも大事なことは学習初期段階での努力の継続だ。努力と成果は比例関係ではなく累乗関係にあるので、すぐに成果が現れないからといって諦めてはいけない。
脳科学研究から、学習の効果は上のグラフのように幾何級数的なカーブを描くことがわかっている。東大の池谷準教授は「学習の目標を1000とした場合、学習を始めた時点を1とすると、2、4、8、16、32、64と累積効果を示していく。この時点では1000までは程遠いと思うかもしれないが、128、256、512とくればもう一息で1024になる。このような成長パターンを示すのが脳の性質。」と指摘している。
6. 英単語の覚え方|続けるために必要な学習計画の立て方
英単語を覚えることは一つのプロジェクトだと考えてほしい。プロジェクトを成功させるためには、実際に始める前に詳細な学習計画を立てよう。
毎日ただ漫然と英単語集をながめているだけの覚え方ではモーティベーションも上がらないし、結果も出にくい。しっかりとした学習計画を立てて実行する。そして学習状況を振り返って確認し、必要があれば学習計画を改善・修正後また実行するというPDCAを回すことで効率的に結果を出していけるのだ。
英単語を覚えるプロジェクト(英単語プロジェクト)の計画の立て方の流れは上の図の通り5つのステップからなる。
6.1. 現状の英単語レベルの確認
まずは自分の英単語の実力を知ることからだ。その際のおすすめの単語集は「JACET8000英単語」(桐原書店)だ。この単語集は音源がないので単語を覚える目的にはあまりおすすめしないが、自分の英単語のレベルを知るにはよい単語集だ。
JACET8000英単語は英単語8000語を使用頻度順に並べた単語集だ。1000語ごとの8つのレベルに分かれており、それぞれのレベルで「自己診断」が用意されている。それをやれば現状の自分のだいたいの英単語レベル(Level 1〜8)がわかるはずだ。自己診断の詳細な方法は「本書の利用法」のところに記載されている。
6.2. 目標の英単語レベルの設定
自分の現状の英単語レベルがわかったら次は目標設定だ。とりあえずの目標ではなく、最終的な目標を決めよう。TOEICやTOEFLの点数や英検など、結果がはっきりと数値化される目標を決め、それに必要な単語レベルを目標とするのがよいだろう。
*出典:「JACET8000英単語」(桐原書店)(The English Club:言い回しを若干変更しているところがあります。)
レベル1(1-1000語): | 中学の英語教科書に頻出する基本単語。 |
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レベル2(1001-2000語): | 高校初級レベルの単語。英検準2級にレベル。 |
レベル3(2001-3000語): | 高校の英語教科書レベルの単語。英検2級レベル。 |
レベル4(3001-4000語): | 大学受験、大学一般教養の初級に相当。 |
レベル5(4001-5000語): | TOEIC 400-500が目安。 |
レベル6(5001-6000語): | TOEIC 600レベル。 |
レベル7(6001-7000語): | TOEICの95%以上の単語をカバー。 |
レベル8(7001-8000語): | 日本人英語学習者の一般的な単語学習の最終目標。 |
上記はJACET8000英単語に掲載されている単語レベルだ。目標設定の参考にしてほしい。ただし、単語数とTOEICの点数などの関係についてはいろいろな意見がある。The English Clubも覚えるべき英単語数については「英語の単語数は2000語で80%!数より質で効率的に単語力アップ」で詳細をご説明している。英単語の覚え方の参考になるはずだ。
6.3. 使用する英単語集の検討
使用する英単語集の選び方についての5つの注意点とおすすめ単語集はすでにご紹介した。上記の「3. 英単語の覚え方|単語集選びの6つ注意点とおすすめ6選」を参考にしてほしい。
英単語学習の効率性は単語集によって大きく変わる。慎重に選んで頂きたい。自分の目標を達成するには1冊だけでは足りない場合もあるだろう。その場合は適切な単語集を組み合わせて使用しよう。
6.4. 目標達成までの学習時間の確定
使用する単語集が決まったら、それらを全部終了するのに必要な学習時間を見積もる。
例えば、DUO3.0は例文が全部で560掲載されているが、1週間に25の例文をカバーすると23週で終了する。1日30分を7日間、その25の例文を使って繰り返しトレーニングするとして、それを2周まわすと46週(23週×2周)になる。必要となる総学習時間は162時間だ(30分×7日×46週)。
6.5. 英単語学習スケジュールの決定
学習時間を確定したら、1日のうちでいつ、どこで、何を、どのように学習(トレーニング)するかを決定する。
例えば、平日は朝の通勤時30分を単語学習にあて、週末土日も自宅で30分確保すると決める。そして、通勤時の歩いているときは25の例文の音源を繰り返し聴き、口パク(リップ・シンク)をやる(単語集は見ない)。電車に乗っているときは、音源を聴きながら単語集を目で追いながら口パクでオーバーラッピングや、単語集を見ないで口パクでシャドーイングをやる。週末は大きな声でルックアップ&セイと音読、シャドーイングを繰り返す。このように1週間のスケジュールを決めるのだ。
このようなスケジュールを決める際、1日の予定の円グラフ(上図)と、今後の日毎の予定のガントチャート(下図)を作成することをお薦めする。英語を習得するには、英単語以外にも文法や定型表現などいろいろやることがある。それら全てについて、いつ、何を、どこで、どのようにやるかを決めて円グラフとガントチャートで管理するのだ。
6.6. PDCAサイクルを回すこと
1日の予定の円グラフと日毎のガントチャートは1度作って終わりではない。スケジュール通りに進んでいないときは当然だが、順調に進んでいる時も定期的に見直そう。モーティベーションの維持にも有効だ。
スケジュールを見直す際は自分の学習状況を振り返ってほしい。教材の難易度や学習量、学習時間、学習方法について振り返り、改善点を考えよう。その際役に立つのが学習記録だ。学習時間と一緒に毎日気になったことをメモに書いておく。それを基に振り返り、改善点を洗い出し、学習スケジュールを作り直し、実行する。そう、P(Plan/計画)D(Do/実行)C(Check/評価)A(Action/改善)サイクルを回すのだ。これが、必ず結果を出す、続けるための英単語の覚え方だ。
こんなことまでする必要があるのか?と疑問に思う方もいるだろう。しかし考えてみてほしい。英語の習得には時間がかかる。TOEICで500点前後の方であれば、仕事で使える英語力を獲得するまで最低でも1年半はかかる。このような時間と労力、つまり膨大なコストがかかるプロジェクトを計画も立てずに始めることはリスクが高すぎる。
なお、英語学習の時間を確保するコツについては、「英語学習には最低3000時間必要!達成するための11のコツと習慣」でご紹介している。こちらも参考になるはずだ。
7. 英単語の覚え方|まとめ
- 英単語の効率的な覚え方は、ただ単に理解できるだけではなく、使えるようにするための「自動化トレーニング」を繰り返し行うことだ。英単語学習用にカスタマイズした8つのトレーニングを是非実行してほしい。
- 必ず結果を出すための英単語の覚え方を追求するならば、絶対に注意すべきことが13ある。全て科学的に裏付けされたものばかりだ。あなたの単語学習に是非取り入れてほしい。
- 英単語の効率的な覚え方を追求する上で脳の性質を無視することはできない。脳の性質を正しく理解し、それを活用した6つの学習習慣を取り入れれば必ず結果はついてくるはずだ。
- 英単語を覚えることは一つのプロジェクトだと思ってほしい。プロジェクトを成功させるには周到な準備が欠かせない。詳細な学習計画を立てて自分自身を管理することで目標を達成することが可能になる。
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