リーディングの目的は2つしかない。「楽しみ」を得ること(reading for pleasure)と「情報」を得ること(reading for information)だ。皆さまは「情報」を得るためのリーディング力をアップさせたいと思っているに違いない。
情報を得るためのリーディング力をアップさせるということは、文章を「速く」かつ「正確」読めるようにするということだ。
このコラムでは、現状の英語力で速く正確に読むための「コツ」に加えて、現状を打破して速く正確に読めるようになるための「練習方法」をお伝えする。そして、おすすめの「教材」もご紹介しよう。
目次
1. 英語のリーディング|必要なのは「コツ」「英語回路」「量」
「TOEICのリーディングの点数を上げたい。」「仕事関連の英語のメールや資料などをもっと素早く読めるようになりたい。」「新聞・雑誌・本・ウェブサイトの英語の情報を素早く理解したい。」など、リーディング力をアップさせたい理由は人によって様々だろう。
最初に結論を言う。英語のリーディング力をアップさせる方法は大きく分けて3つある。① 読む「コツ」を習得すること。そして、②「英語回路」の獲得するための「練習」を繰り返し実践すること。最後に、③「楽しみ」ながらリーディングの「量」を増やすことだ。
最も単純で効果が高い方法は、自分の英語レベルに合った、自分が読みたいと思う本をどんどん読むことだ。どんどん読めばリーディング力がアップする。楽しみながら「速く、正確に」読む力がつく。
しかし、たとえ「楽しみ」のための読書とはいえ、ただ多くを読むには時間がかかる。もっと効率的にリーディング力をアップさせたいとお思いの方も多いだろう。そのためには、効率的に「英語回路」を獲得するための練習を繰り返し実践することも重要である。
また、「楽しみ」のために読むものと「情報」を得るために読むものは、文章の構成などの書き方が異なる場合が多い。したがって、情報を得るための文章を「速く、正確に」読むための「コツ」を習得することも重要なのだ。
2. 英語のリーディング|速く正確に「読む」ための「コツ」
それでは、まずは現状の英語力で速く正確に読む「コツ」をご紹介する。
「情報」を提供するために書かれたものと「楽しみ」を提供するために書かれたものは書き方が異なる。また、「情報」を提供するために書かれたものでも、その素材によって書き方が異なる。
ここでは「情報」を提供するために書かれたものを下記の3つに分けて、それらを読む「コツ」をご紹介したい。
- 「情報」を得るためのリーディング|コツ【共通編】
- 「情報」を得るためのリーディング|コツ【レポート・ビジネス書籍・論文編】
- 「情報」を得るためのリーディング|コツ【新聞・ニュース編】
2.1. 「情報」を得るためのリーディング|コツ【共通編】
この【共通編】では英語で書かれた全ての素材に適用できるコツをご紹介する。全ての素材とは、例えば、仕事関連のレポートや学術的な論文やエッセイ(小論文)、書籍(小説などの「楽しむ」本は除く)、新聞などのニュース素材に加え、スピーチ、ミーティング議事録、情報雑誌、情報提供ウェブサイト、仕事のメールなどに加え、TOEIC、TOEFL、英検などの英語検定試験も含む。
2.1.1. 英語の文章は「重要なことは先、説明は後」
全ての英語の文章に共通することは、重要なこと(結論)は先に、詳細な説明はあとに書かれているということだ。したがって最初の部分を注意して読むことが重要となる。最初が理解できないとその英文の全体が理解できないということになってしまう。
例えば下記のメールを読んでほしい。トム・クルーズ(Tom Cruise)がアリアナ・グランデ(Ariana Grande)に送った、仕事を手伝って欲しいという依頼のメールの冒頭部分だ。
—————————–
Hello, Ms. Grande,
I’ll need your help on our team for the next two weeks. We handle Isetan Stores’ finances, and with Naomi Osaka on medical leave, the team is struggling to meet deadlines. To be specific, I would like you to finish Naomi’s work. She started preparing year-end financial documents for Isetan, but they need to be verified.
……….
Best regards,
Tom Cruise
—————————–
このメールでは、最初に「あなたに我々のチームを今後2週間手伝ってほしい。」という主旨から書いている。その後、チームがやっていること、締め切りに間に合わないこと、やってほしいことなどの詳細を説明している。
英語では、この様に「重要なことは先で説明は後」で書かれることが普通だ。英語を読むときはこのことを意識して頂きたい。
2.1.2. 英語はセンテンスも「重要なことは先で説明は後」
「重要なことは先、説明は後」の原則は、いくつかのセンテンス(文)からなる文章に限らず、一つのセンテンスにも適用される。
I’ve bought the projector that you suggested we use during our presentations at next week’s investors meeting in Tokyo.
例えば、上記のセンテンスを読んでみてほしい。一番伝えたい「何」を買ったかを述べてから(I’ve bought the projector)、それがどの様な「projector」なのかを関係代名詞を使って説明している。「重要なことは先、説明は後」の原則通りだ。
ちなみに、上記の文を自然な日本語でいうと「来週東京で行う投資家向けミーティングでのプレゼン用にあなたが提案していたプロジェクターを買った。」のように、説明が先、重要なことが後になる。
ネイティブ・スピーカーの頭の中は常に「重要なことは先、説明は後」だ。このことを念頭に置いておくと、どのような英文でも早く正確に読めるようになる。
つづいて英文の全文を読まずに必要な情報を得るためのスキルである「スキャニング」と「スキミング」をご紹介する。
2.1.3. スキャニング(scanning)
「scan」とは、もともと「素早く見渡す」という意味だ。「スキャニング」とは文章から特定の情報を探し出すためのスキルだ。我々日本人も日本語では誰でもやっていることなので決して難しいことではない。英語に慣れてくれば自然と身についてくるものだが、リーディングの一つのコツとしてご紹介する。
例えば、あなたが「英語のリーディングの勉強方法」について知りたくてウェブで検索してこのブログ記事にたどり着いたとする。その場合、あなたは最初から丁寧に読み始めるようなことはしない。まずは「勉強方法」に関する情報を探すだろう。それが「スキャニング」だ。
それではスキャニングの練習してみよう。
以下の3つの質問の答えを下記の広告をスキャニングして探してみよう。スピードが命だ。30秒を目処にトライして欲しい。
① What kind of car is it?
② When was the car inspected?
③ Why does Rick want to sell the car?
うまく答えを探せただろうか?正解は載せていない。ゆっくりと読んで自分で確認してみよう。
2.1.4. スキミング(skimming)
「skim」とは、もともと「すくい取る」という意味だ。「スキミング」とは、一語一語を丁寧に読んでいくのではなく、素早く、要点だけを押さえながら全体の大意を「すくい取る」読み方だ。これも日本語ではみなさんやっていることだろう。
例えば、あなたがGoogleで「英語 リーディング」というキーワードで検索してこの記事のたどり着いたとする。そして読んでみたいと思ったとする。でも非常に長い。その場合は、何が書いているのかを理解するためにスクロールしながら流し読みする。それがスキミングだ。
それではスキミングの練習をしてみよう。
下の英文を15秒でスキミングしてから下記の質問に答えてみよう。(先に質問は読まない。)
① この文章の目的は何ですか。
② Perfect Shine Waxは何に使用するものですか。
質問に答えられただろうか?ゆっくりと読んで正解を確認してみてほしい。質問を先に読んでしまうとスキャニングになってしまう。これらスキャニングとスキミングはTOEIC必須のスキルだ。
2.2. 「情報」を得るためのリーディング|コツ【レポート・ビジネス書籍・論文編】
今度は、英語で書かれた仕事関連のレポート(市場レポートや製品レポートなど)や、自己啓発本やノウハウ本などのビジネス書、それから学術的な論文、エッセイ(小論文)などの読み方についてご説明する。
これらの英文については基本的な文章の構成や構造は全て同じと考えてよい。その構成や構造を把握することで、内容を整理しながら、そしてより深く理解しながら速く読み進めることができる。
2.2.1. 英語を読むときは「パラグラフ」に注意
英語を読むときには「パラグラフ」(paragraph)が非常に重要になる。「パラグラフ」(paragraph)は日本語では「段落」と訳されるが、厳密にいうと「パラグラフ」と「段落」の役割は異なる。
英語では「1つのパラグラフには1つのトピック」という決まりがある。つまり、「1つのパラグラフ = 1つの考えのまとまり(主張)」ということが基本なのだ。「段落」にはそのような明確なルールはない。
また「パラグラフ」は、その「パラグラフ」内に何を書くのかも決められている。そして複数の「パラグラフ」をどのように並べるかも決まっているのだ。
英語は「パラグラフ」を中心に厳密なルールのもとで書かれている。したがって、それらのルールを理解しておけば、どこに注意して読めばよいか理解できるのでリーディング力がアップするのだ。
2.2.2. パラグラフを読むときは「トピック・センテンス」に注意
「1つのパラグラフには1つのトピック」がルールだが、まずは何がトピック(主張)なのかを見極めなければならない。その見極めに使えるのが「トピック・センテンス」(topic sentence)だ。トピック・センテンスとは、そのパラグラフで柱となる一文で「このパラグラフで言いたいこと」が示されている。
例えば、下記は「同じ仕事(会社)に人生の大半を費やすべきかどうか。」について書かれたエッセイの冒頭部分だ。
The primary advantage of remaining at the same job for most of one’s life is stability. One who stays at a company for decades knows exactly what to expect and what is expected. This knowledge enables one to consistently achieve success. For example, my father worked for the same company for nearly fifty years. He was able to move steadily up the ladder of success, because he knew precisely what the manager expected him to produce. He was also able to plan for our family’s needs, since the company provided a stable salary and benefits package and he was never between jobs.
*出典:「TOEIC Speaking & Writing 公式テストの解説と練習問題」(IIBC)
このパラグラフでは、冒頭の第一文が筆者が一番言いたいことを示したトピック・センテンスだ。筆者は「人生の大半を同じ仕事に費やす主な利点は安定性である。」ことを主張している。その後のセンテンスでは、その理由と例が書かれている。
一つのパラグラフを読むときは、このトピック・センテンスを理解することに集中してほしい。そうすれば、たとえトピック・センテンス以外の文が理解できなくても文章全体の大意は取れる。
トピック・センテンスはパラグラフの冒頭にくることが多い。したがって、その場合は各パラグラフの最初の一文だけを拾い読みしていけば全体の文章の大意は取れる。しかし、トピック・センテンスは冒頭ではなく中盤や終盤にくることもある。そのような場合に役に立つのが「ディスコース・マーカー」(discourse marker)だ。
2.2.3. パラグラフと読むときは「ディスコース・マーカー」に注意
トピック・センテンスを見つけるためには「ディスコース・マーカー」(discourse marker)が役に立つ。「ディスコース・マーカー」とは文章の論理展開を示す語句のことだ。重要なものをいくつかをご紹介しておこう。
追加の情報を提示する際のディスコース・マーカーの例
- moreover
- furthermore
- in addition
- also
反対の情報を提示する際のディスコース・マーカーの例
- however
- although
- while
- but / yet
トピック・センテンスを探す際は、特に「however」などの反対の情報を提示する際のディスコース・マーカーに注意してほしい。
下記は「一人で働きたいか、チームで働きたいか。」ということについて書かれたエッセイの冒頭だが、「however」(下線)の後の太字の部分がトピック・センテンスになっている。
In my professional life, I have worked on many projects, both alone and together with colleagues. I have found that it is sometimes possible to complete tasks more quickly on my own than when collaborating with others, because I do not need to explain my plans or negotiate decisions with others. However, that small advent is greatly outweighed by the many benefits of working with a helpful group of coworkers. If I had a choice, I would always prefer to work in a team than to work alone.
*出典:「TOEIC Speaking & Writing 公式テストの解説と練習問題」(IIBC)
この文章では、最初は一人で働くことのメリットを挙げているが、「However」以降で180°主張を変え、結局チームで働く方がよいという意見で終わっている。英語での通常の論理展開とは逆の展開になっている。
一般的には、特に「however」の後に著者の言いたいことが述べられていることが多い。
「ディスコース・マーカー」は、トピック・センテンスを探すためだけではなく、文章の論理展開を追う際にも非常に重要な役割を果たす。特に英語の長文を読む際は、ディスコース・マーカーに注意しながら、全体の流れを意識しながら読むことが重要だ。
2.2.4. 「サポート・センテンス」と「コンクルーディング・センテンス」
パラグラフ内にはトピック・センテンス以外に、「サポート・センテンス」(support sentence)と、「コンクルーディング・センテンス」(concluding sentence)、「リンキング・センテンス」(linking sentence)がある。
「サポート・センテンス」とは、トピック・センテンスについての理由や根拠を述べる文である。具体的に述べることでトピック・センテンスを支える役割を果たす。
「同じ仕事(会社)に人生の大半を費やすべきかどうか。」について書かれたエッセイを再度みてみよう。
The primary advantage of remaining at the same job for most of one’s life is stability. One who stays at a company for decades knows exactly what to expect and what is expected. This knowledge enables one to consistently achieve success. For example, my father worked for the same company for nearly fifty years. He was able to move steadily up the ladder of success, because he knew precisely what the manager expected him to produce. He was also able to plan for our family’s needs, since the company provided a stable salary and benefits package and he was never between jobs.
太字の部分と下線の部分全てがサポート・センテンスだ。
太字の部分は、「会社に長くいる人は、何をすべきか、何を期待されているのかを理解できており、その知識が常に成功へと導いてくれる。」と主張することで、冒頭の「人生の大半を同じ仕事に費やす主な利点は安定性である。」というトピック・センテンスを説明している。
下線の部分は、「例えば、」から始めて、父親の具体的な例を挙げることでトピック・センテンスをサポートしているのだ。
「コンクルーディング・センテンス」は、パラグラフが長くなったとき、読者に主張を再強調する役割を果たす。トピック・センテンスを他の言葉で言い換えている場合が多い。このセンテンスは省略される場合も多い。
「リンキング・センテンス」とは、パラグラフとパラグラフとを論理的につなぐ役割を果たすセンテンスのことだ。このセンテンスも省略される場合が多い。
2.2.5. 英語を読むときは各パラグラフの役割に注意
英語の文章は通常3つの種類のパラグラフから構成される。「導入」(introduction)、「メイン」(body)、そして「結論」(conclusion)だ。それぞれのパラグラフの役割を意識して読み進めれば理解は深まる。
「導入」(introduction)は文章全体が何について書かれているかを示す部分だ。通常1つのパラグラフからなる。導入ではあまり細かいことは書かれない。一般的(general)な内容だけからなり、詳細(specific)なことは「メイン」(body)で書かれる。ちなみに上記に挙げた2つの例文は両方とも導入のパラグラフだ。
「メイン」(body)では導入で記されたことについての詳しい説明が書かれる。通常複数のパラグラフからなる。ここで思い出しておきたいのは「1パラグラフ = 1主張」の原則だ。1つのパラグラフには1つのトピックしか書かれていないので、メインの各パラグラフが伝えたい1つのことを確認しながら読んでいこう。
「結論」(conclusion)では今まで書かれてきたことの総まとめが記されている。通常1つのパラグラフからなる。「導入」のトッピック・センテンスを言い方を変えて再度述べたり(restatement)、全体の要約が書かれていたり(brief summary)、最後に自分の考えを述べたり(final statement)している部分だ。結論を読めば大意を取れる場合が多いが、そうでない場合もある。
2.2.6. 時間がないときのレポート・ビジネス書・論文の読み方
レポートやビジネス書、論文を読みたい、もしくは読まなければならないが時間がない。そういう時、上記で説明した知識を活用してほしい。おすすめは以下のやり方だ。
- 「導入」をトピック・センテンスを意識しながらスキミング。
- 「メイン」の各パラグラフの一行目のみを読む。
- 「結論」をスキミング。
メインの各パラグラフの一行目だけを読むのはリスクがある。なぜなら、一行目が必ずしもトピック・センテンスとは限らないからだ。このリスクを最小限に抑えるには、メインは一行目を読んだあと、ディスコース・マーカーをスキャニングしてみることだ。「However」などが見つかればそれ以下のみをスキミングすればよい。
ビジネス書籍の場合は各章ごとに上記を繰り返そう。もしメインを読む時間がなければ、導入と結論をスキミングすれば大意は取れる場合も多い。
2.3. 「情報」を得るためのリーディング|コツ【新聞・ニュース編】
新聞などでニュースを読む場合も、既に説明した下記のことに注意して読もう。
- パラグラフに注意
- 1つのパラグラフには1つのトピック
- トピック・センテンスに注意
- ディスコース・マーカーに注意
一方で、ニュースの場合はレポートや書籍、論文に比べて読みやすくなっている。ニュースの場合は、多くの読者に読んでもらうために文やパラグラフの構成・構造に工夫を凝らしているからだ。その特徴を捉えておけばニュースを読むことも苦ではなくなる。
2.3.1. ニュース英語のパラグラフ構造はシンプル
新聞やウェブなどのニュース記事の構造は共通しており、ほとんどの場合、下記の順番で書かれている。ポイントは、読者にとって重要性の高い情報から順番に書いてある点だ。読み進めれば読み進めるほど詳細の情報や説明、データが提示される。つまり全文を読む必要はないということだ。
- 見出し(headline)
- リード文(lead paragraph)
- 背景・説明・解説(body paragraphs-1)
- 更に詳細の説明・解説・データ・情報(body paragrapghs-2)
見出しにはその記事の「キーワード」が書かれる。特に新聞の見出しは独特なルールに従って書かれており、文法的に正確な文にはなっていない。文の意味がわからなくてもあまり気にする必要はない。そのニュースを読むかどうかは「キーワード」で判断しよう。
「リード文」とはニュース記事の最初のパラグラフだ。ニュースの概要を伝える役割と読者を惹きつける役割がある。どのような内容の記事なのかを、トピック・センテンスを意識しながら、そして5W1H(Who /What /When /Where /Why /How)に注意しながら読もう。
リード文の次にくるパラグラフ(body paragraphs-1)は、リード文に書かれていることの背景の説明や解説をする役割を担う(複数のパラグラフの場合が多い)。そしてその次のパラグラフ(body paragrapghs-2)では、データや情報などを提示しながら更に詳細な説明や解説をしていくことになる(これも複数のパラグラフの場合が多い)。読み進めるにしたがって情報の濃度が濃くなるイメージだ。
2.3.2. 構造を意識して実際のニュースで見てみよう
Wall Street Journal(Web版)に実際に掲載されたニュースをみてみよう。絶滅した鳥「Dodo」の骨格がオークションにかけられるというニュースだ。
Dodo Skeleton Headed to Auction in London Set to Fetch a Half-Million Pounds
見出しのキーワードは「Dodo」「Auction」「Half-Million Pounds」だ。それだけで記事の内容は想像できる。「Dodo」を知らない人も興味を持つように書かれている。
The upcoming Science and Natural History auction hosted by Christie’s London will be putting a host of rare and unusual delights under the hammer later this spring.
このリード文は概要を説明しているが、「rare and unusual delights」(まれで珍しいすごいもの)という言葉を使って、「Dodo」を知らない読者を更に引きつけようとしている。
None more so than a near-complete dodo skeleton, which is expected to sell between £400,000 and £600,000 (US$517,080 and US$775,581) at the auction on May 24.
リード文に続くこのBody では、「rare and unusual delights」が何なのか、そしてその予想価格を説明している。しかし「Dodo」が何であるかはまだ説明していない。
Rare and in “great condition,” the skeleton is made up of fossilized bones from various dodo remains found in the Mauritian marshland Mare-aux-Songes, along with unfossilised bones found by the early 19th century Mauritian naturalist, Etienne Thiriou, according to a news release from Christie’s.
続くこのBodyでは、その骨格がいつ、どのように発見され、作られたのかの詳細を解説している。続くパラグラフで、やっと「Dodo」が鳥であることなどの詳細な説明が続く。「Dodo」を知らない人に記事を多く読んでほしいというライターの戦略も透けて見える。
読み進めるにしたがって情報がより詳しくなっていくのが理解できるはずだ。必ずしも最後まで読む必要なない。ニュース記事はこのような構成になっていることが理解できれば、英語ニュースを読むハードルも下がるはずだ。
3. 英語のリーディング|速く正確に「読めるようになる」ための「英語回路」
今度は「速く正確に読む力をつけるにはどうすれば良いのか?」を考えてみよう。上記では、速く正確に読む「コツ」についてご説明したが、今度はそもそもの「読む力」の向上方法についてご説明する。
速く正確に読むためには、英語を英語のまま、英語の語順で読み進める必要がある。「英語を英語のまま」というのは、いちいち日本語に訳してから理解するのではなく、英語のまま理解するということ。「英語の語順で」というのは、英語を後ろから戻り訳して理解するのではなく、英語を前から理解しながら読み進めるということだ。
3.1. 速く正確に読むためには「英語を英語のまま」読む
英語を理解するのに、頭の中でいちいち日本語に変換して理解していたら速く読めるようにはならない。「cat」は「猫」と理解するのではなく、「cat」は「cat」のまま理解するということだ。
英語を英語のまま理解できるようする方法は3つある。一つ目は英英辞典を活用すること。二つ目は多くの英文に触れること。そして三つ目は、下記でご紹介する「自動化トレーニング」を繰り返し行うことだ。
3.1.1. 英英辞典を活用すること!
英英辞典を活用することにより、英語を読むときにいちいち日本語に変換してから理解する癖から脱却できる。
英単語を覚えるには、最初は日本語訳を覚えることから始めなければならない。しかし、ある時点から、日本語訳を覚えるということが英語力向上の弊害になってくる。日本語で理解する癖が抜けなくなるからだ。英語を読むときは、日本語を介入させずに理解できなければ速く読めるようにはならないのだ。
代表的な英英辞典である「ロングマン」や「オッスクフォード」は、重要語3,000語以内で説明されている。需要語3,000語をある程度深く学習した後に、是非これらの英英辞典を活用してほしい。
なお、英単語の覚え方についての詳細は「英単語の覚え方|みんな実践中!8つの基本トレーニングと25のコツ」を参考にして頂きたい。
3.1.2. 多くの英文に触れて英語のまま理解する
多くの英文に触れるというのは、いわゆる「多読」のことだ。多読では、知らない単語は文脈や前後の関係からその意味を推測しながら読む。それを繰り返すことで英語を英語のまま理解できるようになるのだ。
どういうことか?英単語は重要な単語ほど色々な意味を持つ。例えば「base」という単語は、「根拠」「基地」「野球の塁」などの色々な日本語の訳語がある。しかし、それらの訳語を一つ一つ覚えることは現実的ではない。「基軸となる場所」という中核のニュアンスを習得することが重要なのだ。
知らない単語の意味を文脈や前後の関係から推測しながら読むことを繰り返していると、その中核のニュアンスを習得できる。それこそがネイティブ・スピーカーの持っている感覚なのだ。
なお、多読の効果ややり方についての詳細は「英語多読の効果|第二言語習得研究も認めた効果とおすすめ多読法!」も参考にしてほしい。
3.1.3. 英語を英語のまま理解するための「自動化トレーニング」
「自動化トレーニング」は全部で22種類のトレーニング方法が含まれる。そのうち、英語を英語のまま理解するためのレーニングは「音読」「アイ・シャドーイング」「オーバーラッピング」の3つだ。それぞれのやり方は後ほどご説明する。
3.2. 速く正確に読むためには「英語の語順」で読む
英語の語順と日本語の語順は全く異なる。そのために我々は中学・高校で「戻り訳し」ばかりやらされてきた。その「戻り訳し」の癖から脱却できない限り、速く正確に読めるようにはならない。
「I’m reading a book which I borrowed from the library.」という英文あれば、上記のように戻り訳すのではなく、「私は読んでる、本を、その本を渡しは借りた、図書館から。」というように、前から理解できるようにしない限り速く読めるようにはならないのだ。
英語を英語の語順で理解できるようする方法は2つある。一つ目は多くの英文に触れること。二つ目は下記でご紹介する「自動化トレーニング」を繰り返し行うことだ。
3.2.1. 多くの英文に触れて語順になれる
ただ多くの英文に触れるだけではなく、前から理解することを意識しながら多く読むことが重要だ。そのことなしに英語の語順に慣れることはできない。
我々日本人の脳は日本語の語順の回路を持っている。したがって意識しなくても日本語の語順で話せる。しかし、英語の語順の回路は持っていない。その状態で英語を理解しようとするから上記のような「戻り訳す」必要が出てくるのだ。
「戻り訳す」ことなく英語を理解できるようになるには、英語の語順の回路をもう一つ作る必要がある。つまり英語脳を作るということだ。英語脳は一朝一夕には作れない。繰り返しが必要なのだ。だからこそ英語を前から理解することを意識しながら多くの英語に触れることが必要になってくる。
なお、英語脳の存在は脳科学(神経科学)研究で証明されている。英語の語順の回路や英語脳についての詳細は「英語脳の作り方|8つの自動化トレーニングで英語回路を構築しよう!」が参考になるはずだ。
3.2.2. 英語の語順で読むための「自動化トレーニング」
英語の語順で読むためのトレーニングは「スラッシュ・リーディング」「音読」「アイ・シャドーイング」「オーバーラッピング」の4つだ。それぞれのやり方は後ほどご説明する。
英語の語順を決めるのは文法だ。文法の勉強法方についての詳細は「英文法勉強法|科学的トレーニング法8選と8つの基本的な注意点」を参考にしてほしい。
4. 英語のリーディング|速く正確に「読めるようになる」ための「量」
上記の説明から、リーディング力アップには英語を多く読む「多読」が非常に重要だということがご理解できたと思う。それに加えて「楽しむ」ということが重要になってくる。楽しみながら読むことでリーディング力が更にアップすることが脳科学的に証明されているからだ。
早稲田大学名誉教授 ジェームス M. バーダマン(James M. Vardaman)氏の研究結果によると、面白いと思って読んだものは、可もなく不可もなくというものに比べて、インプット率(内容の定着率)が1.15倍に上がったそうだ。
脳科学では、スウェーデンの神経生理学者がθ波がシナプスの活動を活性化することを発見している。これは脳内にθ波を発生させれば記憶力が向上するということを意味する。θ波を発生させるもっとも効果的な方法は覚えたいものに興味を持つことだ。東京大学大学院神経生理学准教授の池谷氏は、何にでも興味を持つ「好奇心」と「探究心」こそが記憶にとって非常に重要だと指摘している。
英語自体に興味を持つことができない場合は、英語で興味があることを多く読もう!
5. 英語のリーディング|速く正確に読めるようになるための「練習方法」
早く正確に読めるようになるためのおすすめの練習方法(以降、トレーニングという。)は、何よりもまず上記で説明した「多読」だ。そして、英語を英語のまま理解できるようにするための「音読」「アイ・シャドーイング」「オーバーラッピング」と、英語の語順で読めるようにするための「音読」「スラッシュ・リーディング」「アイ・シャドーイング」「オーバーラッピング」だ。
ここでは、「多読」を除いた、「音読」「スラッシュ・リーディング」「アイ・シャドーイング」「オーバーラッピング」の4つのトレーニングについてその効果とやり方をご紹介する。
5.1. 音読(reading aloud)の効果とやり方
音読は、英語を英語のまま、英語の語順で理解するための基本中の基本のトレーニングだ。特に、意味(内容)を理解しながら音読することは、英語を前から理解することになるので(後ろから戻り訳せないので)、英語の語順の回路の基礎を作る最適なトレーニング方法だといっていい。
音読は繰り返し行うことが基本だ。注意すべきことは、事前に単語と文の構造(文法)を十分に理解することだ。意味がわからない英文を繰り返し音読しても全く効果はない。
また、意味はなんとなく理解できても、文の構造を理解しないで音読を繰り返しても効果は薄い。音読を繰り返すことにより文法知識の自動化が進み、自分で文章を作る能力の向上も期待できる。しかし、文の構造を理解しないままだとその効果が期待できなくなるからだ。
音読のやり方と効果についての詳細は「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」も参考になるはずだ。
5.2. スラッシュ・リーディング(slash reading)の効果とやり方
スラッシュ・リーディングとは、英文を前から、意味のかたまりごとにスラッシュ(/)を入れて読むトレーニングだ。英語を英語の語順で読めるようにすることが目的だ。音読を繰り返しても意味が入ってこない方や、どうしても戻り訳す癖が抜けない方におすすめする。
上記で使った、トム・クルーズがアリアナ・グランデに送ったメールでスラッシュ・リーディングを実際にやってみよう。
I’ll need your help / on our team / for the next two weeks. / We handle Isetan Stores’ finances, / and with Naomi Osaka on medical leave, / the team is struggling / to meet deadlines. / To be specific, / I would like you / to finish Naomi’s work. / She started preparing / year-end financial documents / for Isetan, / but they need to be verified. /
スラッシュを入れたところまでの意味を理解してから次に進む。慣れるまでは日本語に訳しながらでもいい。途中まで日本語に訳してみたので続きをやってほしい。(必ずしも日本語に書き出す必要はない。)
私はあなたの助けが必要だ/私たちのチームに/次の2週間。/我々はイセタンの財務を担当している/そして、ナオミ・オオサカが病気で休んでいる。/チームは悪戦苦闘している/締め切りに間に合うように。/
なお、スラッシュを入れる場所に正解・不正解はない。自分で区切りがよいと思うところに入れて練習してみてほしい。
5.3. アイ・シャドーイング(eye shadowing)の効果とやり方
アイ・シャドーイングは音声を使う。音源を聴きながら英文を目で追うトレーニングだ。意味(内容)を理解しながら目で追うことにより、英語を英語のまま、英語の語順で理解する処理スピードを上げることが目的だ。発音の確認にもなる。
アイ・シャドーイングは、音読もしくはスラッシュ・リーディングを繰り返し行ったあとにやったほうが効果が出やすい。それらの練習を通して英文の内容と文の構造を熟知しているからだ。
5.4. オーバーラッピング(overlapping)の効果とやり方
オーバーラッピングは、アイ・シャドーイングをしながら自分でも声を出す。遅れないように、音源とぴったりと重ねるようについていく。口を使い声を出すという負荷を加えることでアイ・シャドーイングの効果を更に高める。
オーバーラッピングは文字と意味と音をつなげる基本のトレーニングでもある。音声の知識の自動化も期待でき、リスニングやスピーキングの能力向上にもつなげることができる。
5.5. 効果的なトレーニング・フロー
上記のトレーニングは単独ではなく続けて行うとより効果が高くなる。まずスラッシュ・リーディングで意味と文の構造を理解しながら英語を前から読む練習をし、次に自分のペースで音読して頭をならす。そしてアイ・シャドーイングでスピードに慣れ、再度にオーバーラッピングで仕上げる。これがおすすめのトレーニング・フローだ。
この一連のトレーニングは細かい所までよく注意して読む「精読」とも言えるだろう。
なお、音読を数回やってみて、意味が頭に入ってくるようになればスラッシュ・リーディングは省いても構わない。このトレーンング・フローは何度も何度も嫌になるくらいまで繰り返し行うことを強くおすすめする。
6. 英語のリーディング|速く正確に読めるようになるための「おすすめ教材」
英語のリーディング力強化用の教材をご紹介する。自分が楽しく読めるものが一番よい。ここで紹介した以外のものでもいい。自分で読みたいものを見つけて、楽しみながら読んでほしい。なぜなら継続することが最も重要だからだ。
Pearson Graded Readers[Pearson Education]¥1,000円前後
旧ペンギンリーダーズ。多読用の書籍。英検4級(TOEIC250)レベルから準1級(TOEIC730)レベルまで、レベル別に様々なタイトルが出版されている。音源が付属されているタイトルも多い。このピアソン以外にも、オックスフォードやケンブリッジからも同様の多読本が出版されている。
CommonLit
アメリカの5th~12th Grade(日本の小学5年生~高校3年生)の学生向けに、教育用の読書テキストを無料で提供しているサイト。NPOのCommonLitが運営。フィクションからノンフィクションまで、教育に適したあらゆる読書用テキストが読める。音声で読み上げてくれる機能もある。
Financial Times 月~土曜日発行6ヶ月72,000円
1888年に創刊されて以来、「国際ビジネス紙」。特に金融・経済関連記事の評価が高いイギリスの新聞。2015年日本経済新聞社傘下となった。ビジネスパーソンの上級者にオススメの一紙。ご紹介したニュースの読み方を知って入れば中級でも十分対応可能。ウェブ版は紙を購読しないと読めない。土曜日版のみは1年で33,100円。
7. 英語のリーディング|まとめ
- リーディング力をアップさせる方法は3つ。① 読む「コツ」を習得する。②「英語回路」を獲得する。③「楽しむ」リーディングの「量」を増やす。
- 英語は、重要なことは先に、説明はあとに書かれていることを理解しておくと読みやすくなる。英語でもスキャニングやスキミングができるようになるとリーディング力の幅が広がる。
- 英文を読むときは、パラグラフ毎のトピック・センテンスとディスコース・マーカーに注意しながら読むことだ。そして導入・メイン・結論というパラグフラフの並びにも意識すると早く正確に読めるようになる。
- ニュース記事を読むときは、見出しのキーワードでその記事を読むかどうかを決め、リード文でそのニュースの概要をおさえ、興味があればそれ以下の詳細解説を読み進めればよい。ニュース記事は全てを読まなくてもいい構造になっている。
- リーディング力をアップさせるには、英語を英語のまま、英語の語順で理解できるように「英語回路」を作る必要がある。そのためには、多くの英文に触れること、そして「自動化トレーニング」を繰り返し行うことだ。英英辞典を使うこともオススメしたい。
『英語独学完全マニュアル』
独学で効率的に習得する科学的学習法の全て(全79ページ)
英語は独学が基本です。しかし、「自分の学習方法が正しいかどうか…」不安に思っていませんか?本書は、英語の学習方法についてお悩みの皆さまに、第二言語習得研究と脳科学(神経科学)研究の知見に基づいた真に効率的な英語学習法をご紹介する解説書です。
無料eBookの主な内容
- 単語・文法・発音の効率的な基礎力強化方法
- インプット(読む・聞く)能力向上のための英語脳作りトレーニング法
- アウトプット(話す・書く)能力向上のためのリハーサル・トレーニング法
- 学習計画の立て方と効率性を上げるための学習習慣
そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。