「瞬間英作文」はある程度の効果があることは認める。特に初・中級者向けにはよいだろう。しかし、より高い英語力を目指すのであれば決してお薦めはできない。第二言語習得理論に基づいた「ディクトグロス」や「リフレージング」、「シミュレーション」などの日本語を介入させないトレーニング法をお薦めする。
瞬間英作文を薦めている言語学者をThe English Clubは知らない。なぜか?第二言語習得研究と脳科学(神経科学)研究の知見から、その理由をわかりやすく検証してみよう。その結果は明確だ。あなたを含めた多くの英語学習者が納得できると信じている。
このコラムは「瞬間英作文」を批判することが目的ではない。「英語力を効率的に学習して頂きたい。」という強い思いから書いたものだ。ご理解頂けると幸いだ。
目次
1. 瞬間英作文では英語脳は作れない!
瞬間英作文とは日本語を口頭で素早く英作文するトレーニングだ。確かにこのトレーニングを続ければ、ある程度カタコトの英語であれば話せるようになるだろう。
しかし、仕事などで必要となるある程度高度な英語力が必要な皆さまにはお勧めできない。なぜなら、このトレーニングを続けることは英語を流暢に使えるようになるための英語脳(英語回路)の構築を妨げることになるからだ。
ちなみに、このコラムに出てくる「第二言語習得研究」とは、第二言語(≒外国語)を習得するメカニズムやプロセスの研究、もしくはその研究分野のことである。
1.1. 日本人が日本語を話すときのプロダクション・モデル
第二言語習得研究では「プロダクション・モデル」(production model)という理論がある。人間が言葉を発する際の脳内のプロセスを説明したものだ。日本人が日本語を話すときのプロセスを、このプロダクション・モデルを使って簡単に説明しよう。
人間は話そうとしたとき、まずは言いたいことが頭に浮かぶ。この段階ではまだ「言語化」していない「概念」の状態だ。その「概念」を日本語の「単語」「文法」「発音」の知識を活用して日本語という「ことば」(「形式」)にする。そして最後に「調音」して、その日本語の「ことば」を声にして発するのだ。これが日本語の回路、つまり日本語脳だ。
1.2. 日本人が英語を話すときの目標とすべきプロダクション・モデル
英語を流暢に話せるようになるためには、下の図のように、脳内のプロセスを全て英語でできるよう日本語の回路(日本語脳)とは別に、もう一つ英語の回路(英語脳)を作る必要がある。つまり英語を使うときは一切日本語は介入させない。我々英語学習者の究極の目標である。
1.3. 日本人が瞬間英作文で英語を話すときのプロダクション・モデル
しかし、頭の中で日本語から英語に変換する「瞬間英作文」を繰り返しているとその癖が定着してしまい、いつまで経っても英語回路を構築することができない。瞬間英作文をする際のプロダクション・モデルは下の図の通りだ。
頭に浮かんだ言いたいことを一旦日本語化し、それを日本語で覚えた英単語と英文法の知識と照らし合わせながら英語に変換してから発話するのだ。
初級者の方が英語を話す場合も100%このプロセスを踏むことになる。しかし、正しいトレーニングを積めば徐々にこのプロセスを踏む割合が減っていき、日本語が全く介入しないプロセスへと段階的に移行できる。徐々に英語回路(英語脳)を構築していくということだ。これこそが日本人が英語を習得する「正統」なプロセスである。
しかし、瞬間英作文をいつまでも繰り返していると、上記の様に日本語で英語を「遠隔操作」するような言語学的にみても「特異」なプロダクション・モデルがあなたの脳に固定化してしまう恐れがある。第二言語習得研究の見地からも「英語を習得したとはいえない」状態になってしまうのだ。
2. 英語脳は存在する!脳科学研究からの報告
「英語脳」というと「怪しい」と思う方もいるかもしれない。しかし「英語脳」は、脳科学(神経科学)研究からその存在が確認されている。
1997年に科学雑誌「Nature」に発表された論文によると、高校生以降に第二言語として英語を習得した人の脳を調べた結果、母語(日本人の場合は日本語)を使用するときと英語を使用するときでは脳の別の領域が活動するという実験結果が出たのだ。
また、新潟大学脳研究所教授の中田氏の実験では、日本人が日本語を使っているときと、アメリカ人が英語を使っているときでそれぞれ脳の活動がはっきりと違ったそうだ。東京大学大学院神経生理学准教授の池谷氏は、その理由として、「日本語と英語の持つ音韻や文法構造の違い」などが考えられるとしている。日本語脳と英語脳が存在する科学的な証拠である。
なお、英語脳の作り方についての詳細は「英語脳の作り方|8つの自動化トレーニングで英語回路を構築しよう!」も参考にしてほしい。
3. 瞬間英作文の逆効果① 英語を英語のまま使える能力が獲得できない
英語脳を獲得できないと英語を使うときにも常に日本語が介入することになる。例えば「I love you.」と言われた場合、常に「私はあなたを愛している。」と日本語に変換してから理解することになる。また「I hate you.」と言いたいときは、日本語で「私はあなたが大嫌いだ。」と考えてから「I hate you.」と英語に変換することになる。
3.1. 日本語脳で英語を使おうとすると詰まってしまう
このプロセスで英語を話そうとする最大のデメリットは、日本語の単語を適切な英単語に訳せなくて会話の途中で詰まってしまうことだ。
「「大嫌い」って英語でなんて言うんだっけ・・・?」
という状態で固まってしまう。誰でも経験したことがあると思うが、日本語から英語に変換している限りこの状況から脱却することはできない。
3.2. 英語脳を構築することが英語を習得するということ
正しいトレーニングを積み英語脳を構築していけば、「I love you.」と言われたら「I love you.」のまま理解できるようになる。「I hate you.」と言いたければ「I hate you.」のまま口から出てくるようになる。変換できなくて「詰まる」ことも徐々になくなってくる。
このような状態にすることが本来の「英語を習得する」ということだ。瞬間英作文を続けている限りこの「英語を習得する」状態にはなれない。
4. 瞬間英作文の逆効果② 英語の語順で考える能力が獲得できない
日本語脳で英語を使おうとするとうまくいかない最大の理由は語順だ。英語と日本語の語順は全く違う。日本語脳で英語を話すということは、話すたびに頭の中でいちいち語順を並べ替える作業をするということだ。これは現実的ではない。
4.1. 日本語脳で英語を使おうとすると語順を組み替える作業が必要
「私は、図書館から借りた本を読んでいる。」
例えば上記の日本語を英語にしたいとする。その場合、「I」の後は一番後ろまで戻って「am reading」と言ったから「a book」と前に戻って、更に関係代名詞を使いながら戻って「which I borrowed」と言ってから、更に戻って「from the library」という風に語順を組み立て直さなければならない。
「I am reading a book which I borrowed from the library.」
日本語脳で英語を話そうとするとこのような作業が必要になるのだ。英語が得意な日本人の知り合いに、英語を話す際このような作業を行なっているかどうかを聞いてみてほしい。答えは絶対に「ノー」だ。
4.2. 英語脳を獲得すると簡単な単語と単純な文法でさらっと言える
英語脳を獲得できれば、難しい日本語の表現を語順を組み立て直しながら英語に変換する必要がないので、言いたいこと(概念)を直接簡単な英語(簡単な単語と単純な文法)で組み立てられるようになる。例えば、上記の例文も下記のような簡単な英語がすっと出てくるようになるのだ。
「I borrowed a book from the library the other day, and now I am reading it.」
ちょっと長くなったが表現は単純になったことがわかるはずだ。関係代名詞も使っていない。でも同じことを言えている。
我々日本人は日本語が得意だから複雑なことでも日本語では言える。しかし英語は苦手なので、その複雑な日本語を英語に「訳す」ことに苦労するのだ。したがって、複雑な日本語にしてから複雑な英語に変換するのではなく、「概念」から直接英語にすることで簡単な表現でさらっと言えるようになるのだ。
瞬間英作文を続けている限りこのような状態にはなれない。英語脳を獲得することが英語習得の近道だということがご理解できるだろう。
5. 瞬間英作文の逆効果③ 日本の学校教育の使えない英語の延長
上記の日本語を英語に変換する方法はどこかで習った覚えはないだろうか?そうだ、我々日本人はこの「戻り訳し」ばかりさせられてきたのだ。特に英語を理解するとき、「戻り訳し」ながら日本語にして「解読」してきた。
5.1. 日本の英語教育の「文法訳読方式」は使えない英語の元凶
「I am reading a book which I borrowed from the library.」
上記の文を、主語を「I」を訳してから、一番後ろから「戻り訳し」て下記のように理解する方法ばかりやってきたのだ。
「私は、図書館から借りた本を読んでいる。」
この方法は第二言語習得研究では「文法訳読方式」といい、日本の学校教育の「使えない」英語の元凶であるとやり玉に上がっている学習方法だ。なぜこの方法が使えない方法なのか?この記事をここまでお読みいただいた皆さまは既にご理解できるはずだ。
5.2. 過去の過ちを繰り返すのはやめよう!
英語は英語の語順のまま前から理解できなければ使いものにならない。例えば聞いた英語は戻り訳せない。英語の語順の回路を作らない限り英語力は向上しないのだ。
瞬間英作文はこの「文法訳読方式」となんら変わらない。違いは「瞬間」でやることくらいだ。皆さまには間違いを繰り返して頂きたくない。
6. 瞬間英作文の逆効果④ そもそも日本語は英語に訳せない!
そもそも、「訳す」ことから脱却しない限り英語を使えるようにはならない。英語は英語のまま理解し発信することを目標にしなければならない。その方が効率的でもある。
6.1. 日本語の単語は英語に訳せないものが多い
当たり前だが、日本語と英語は全く違う言語だ。もっとも遠い言語だといっても過言ではない。したがって、日本語の単語と英単語は「apples-to-apples」にはなり得ない。確かに「猫」=「cat」の様に全くのイコールな単語も名詞には多い。しかし、日本語の単語が英語にはない場合も多い。その場合は「訳す」ことは不可能だ。
例えば、日本語の「転勤」という単語に対応する一般的な英単語は存在しない。
「私は昨年ここに転勤してきた。」
この表現は英語では下記のように表現するが、これは訳しているのではない。英語に訳すことが不可能なので一般的な表現に置き換えているだけだ。
「I was transferred here last year.」
(私は昨年ここに移動させられた。)
「「転勤」は英語でなんて言うんだろう?」と訳すことに悩んでいる限り英語は上達しない。日本語を英語に訳すということの限界の一つの例だ。
6.2. 日本語の表現を英語に訳すと不自然になる場合が多い
単語だけではない。センテンス(文)でも同じことだ。日本語のセンテンスを英語に訳す際、またはその逆の場合でも、直訳すると意味がわからなくなることや不自然な言い回しになることがよくある。
例えば、オフィスにお客様がいらした際、「お座りになってください。」という日本語は自然だが、それを英語に直訳した「Please sit down.」は非常に失礼な言い方だ。「うろうろしていないで座っていろ!」のニュアンスが含まれているからだ。
「Please have a seat.」が自然な言い方だ。しかし、今度はそれを日本語に直訳すると「どうぞ座席を持ってください。」になり、これもまた不自然になる。英語を使う際、日本語と英語を「訳す」作業が全く役に立たない場合も多いということを理解してほしい。
7. 英語という新しい言語を獲得しよう!
我々日本人が英語を習得する際、学習の初期の頃は日本語で意味を理解し、覚えなければ何も始まらない。例えば英単語を覚えるには、まずは日本語の訳語を覚えることから始める。英文法は日本語で理解する。最初はその方が効率的なのは確かだ。
しかし基礎が固まった後は、なるべく日本語を頭の中から排除するように努力すべきである。日本語で英語の「遠隔操作」の方法を覚えるのではなく、日本語に加えてもう一つ英語という言語を獲得するという意識が大切なのだ。
瞬間英作文は頭の中で日本語と英語を行ったり来たりする。通訳を目指す方々にはよい練習方法なのかもしれない。しかし我々は通訳になる必要はない。英語で流暢にコミュニケーションできればよいのだ。それには、英語を英語のまま理解し、英語で考え、それをそのまま英語で表現するということを目標にすべきだ。
8. 第二言語習得研究からのおすすめ学習法とおすすめ教材
瞬間英作文に代わる、英語を英語のまま理解し、英語で考え、それをそのまま英語で表現することを目標にしたトレーニング方法をご紹介する。英語脳を効率的に構築することによって英語を話せるようになるためのトレーニングだ。
なお、ご紹介するトレーニング方法は、瞬間英作文のように「瞬間」、つまり「素早く」英文を作ることは重視していない。正確な文章を作れない状態ではスピードを気にするべきではない。素早く「変な」英語を作れるようになっても意味がない。ゆっくりでもいいので正確な文章を作れるようになってから徐々にスピードを上げていけばいい。
第二言語習得研究の第一人者である、東北学院大学教授の村野井氏が推奨する方法などを参考にした。
8.1. ディクトグロス(Dictogloss)
ディクトグロスは、カナダの言語学者メリル・スウェイン(Merrill Swain)が提唱している、文章を復元することによってアウトプット能力の向上を目指すトレーニング法だ。
8.1.1. ディクトグロスのやり方
- 2〜3センテンスのまとまった文章を聴く。前もって学習していないものが望ましい。
- 聞き取れたところをメモにとりながら聴く。あまり聞き取れない場合は数回繰り返してもよい。
- 聞き取れなかった(書き取れなかった)ところを、文脈や前後関係から推測して文章を復元する。
- 音声のスクリプト(英文)と比較する。単語(スペルを含む)と文法を中心に間違った理由を分析する。
聞き取れなかったところを推測しながら文を復元することで自分で正確な文章を作れるようにすることが目的のトレーニングだ。最後に聞き取れなかった理由も分析することでリスニング力も向上できる。
8.1.2. ディクトグロス用おすすめ教材(初級者用)
英会話・ぜったい音読 標準編[講談社]¥1,300+税
TOEIC470〜600点の方を対象とした音読教材の定番。CDも付属している。初級者向けのディクトグロス用に適している。シリーズにレベルの違う「入門編」と「挑戦編」がある。中学・高校の英語のテキストから大人でも耐えられる内容のものを掲載。
8.2. リフレージング(Rephrasing)
リフレージングは通訳を目指す方の基本トレーニング。別の表現に言い換えることによりアウトプット能力の向上を目指す。日本語を介入させないので一般の英語学習者にもおすすめだ。
8.2.1. リフレージングのやり方
- 1センテンスが長めの英文を1センテンス聴く。前もって学習したものでも、していないものでもよい。意味が取れない場合は繰り返してもよい。
- 同じ内容になるように、他の表現に言い換える。主語を変えると言い換えやすくなる。
- 全く同じ意味にならなくてもよい。1センテンスで言い換えられない場合は、複数のセンテンスにしてみる。
- 自分で作った文章を書き取り、オリジナルの英文と比較する。自分の文章に誤りがないか分析する。
言い換える際はなるべく簡単な単語と単純な文法で表現することを心がける。英語で話していて、詰まった時に言い換えられる力がつく。口頭で行うことで頭の中で英文を作る瞬発力も鍛えられる。
8.2.2. リフレージング用おすすめ教材(中級者用)
公式TOEIC(L&R)問題集[国際ビジネスコミュニケーション協会]¥2,800+税
上級者向け。Section3と4の問題がリフレージング用の素材として使える。ビジネスでよく使われる表現も多く含まれているのでスピーキングにもつなげることができる。TOEICリスニング対策にもなる。
8.3. サマライジング(Summarizing)
サマライジングは読んだり聞いたりした内容を自分の英語で要約するトレーニングだ。東北学院大学の村野井教授が勧める「自律要約法」(Autonomous summarizing)を参考にした方法をご紹介する。
8.3.1. サマライジングのやり方
- ニュースやショート・スピーチなどの長めの英文全体の概要を理解する。音声でも文字でもよい。理解が浅い場合は繰り返してもよい。
- 要約する上で重要だと思うキーワードなどをノートに書き出す。センテンスを丸ごと書き出すことはしない。必要な場合はリフレーズ(言い換え)したものを書いておく。
- 書き出したものを見ながら要約を英語で書く。本文の1/3程度の量を目指す。慣れてきたら、要約を書く前に、書き出したキーワードなどを見ながら口頭で要約してみる。
- 自分の要約とオリジナルの英文とを比較・分析する。単語・文法・表現等の間違いを修正する。
- 2回目の要約を口頭で行う。
自分の間違いに自分で気付くことが一番の目的のトレーニングだ。口頭で要約することを重視すれば頭の中で英文を作る瞬発力も鍛えられる。ある程度長い要約を自分で作ることによって英語の文章の構成も理解することができる。
8.3.2. サマライジング用おすすめ教材(上級者用)
CNNニュース・リスニング[朝日出版社]¥1,000+税
ニュース専門テレビ局CNNの放送から短いニュースを20本収録。1本は30秒ほどの長さ。放送のナチュラル音声と、ナレーターがゆっくりと読み直した音声が収録されているので、上級者用のサマライジング用に最適。
8.4. シミュレーション(Simulation)
英語を話せるようになるためには英語で考える必要がある。しかし、なかなかできることではない。シミュレーションは「英語で考える」代替のトレーニングだ。事前シミュレーションと事後シミュレーションがある。
8.3.3. 事前シミュレーション(Pre-simulation)
- 自分が英語を話さなければならない状況を想定する。(例えば、ホテルのチェックインや、ミーティングでの発表など。)
- 何を言うかを頭の中で考え、英文を作ってみる。時間をかけても正確な文章を作ることに集中する。
- 頭の中で作った英文を書き出してみる。単語・文法・表現が間違っていないか分析する。
- 作った英文を何度も暗唱する。
8.3.4. 事後シミュレーション(Post-simulation)
- 自分が英語を話した場面を振り返り、うまく言えなかったことを思い出す。
- どのように言えばよかったかを再度頭の中で考え、英文を作ってみる。時間をかけても正確な文章を作ることに集中する。以下は「事前シミュレーション」を参照。
シミュレーションは自分で使える表現を蓄積することが目的のトレーニングだ。
事前でも事後でも重要なことは、なるべく簡単な単語と単純な文法で短い文章を作ることだ。文法的に間違っているかどうか自分で判断できない英文は作らないようにして欲しい。中学英語で必ず言いたいことは言える。そして、中途半端にしないこと。中途半端にしておくと、その中途半端のまま記憶に残ってしまう(化石化)。
8.3.5. おまけ|シミュレーションと英会話スクールとの違いとは?
英会話スクールやオンライン英会話で話す練習をすることとシミュレーションとはどう違うの?と疑問に思う方もいると思う。大いに違う。話せるようになるためには、言いたいことをどのようにいうのかを「考える」ことが必要なのだ。自分で「考える」ことで正しい表現が徐々に身につき、使えるようになっていく。
英会話スクールなどで話す機会を持つだけでは、いつまで経っても話せるようにはならない。自分で「創作」した「変」な英語が身につくだけだ。第二言語習得研究では「化石化」という。講師に訂正されても、自分で一生懸命創り上げたその「変」な英語が強烈な印象を持って自分の中で「化石化」してしまう。他人に言われたことなどすぐに忘れてしまうのだ。
なお、スピーキング力を向上させる方法については「英語スピーキング|話せない方必読!リハーサルの重要性と注意点5つ」も参考になるはずだ。
9. 瞬間英作文の効果|まとめ
- 瞬間英作文とは日本語を口頭で素早く英作文するトレーニング。ある程度高度な英語力が必要な皆さまにはお勧めできない。英語脳の構築を妨げることになるからだ。
- 英語で流暢に話せるようになるためには、日本語の回路とは別に、もう一つ英語の回路を作る必要がある。英語を使うときは一切日本語は介入させないというのが我々英語学習者の究極の目標だ。
- 英語脳というと「怪しい」と思う方もいるかもしれない。しかし英語脳は、脳科学研究からその存在が確認されている。
- 英語を話すときに日本語を介入させる最大のデメリットは、日本語の単語を適切な英単語に訳せなくて会話の途中で詰まってしまうこと。「概念」から直接英語にすることで簡単な表現でさらっと言えるようになる。
- 瞬間英作文は学校教育の使えない英語教育の延長だ。日本語で英語の「遠隔操作」の方法を覚えるのではなく、日本語に加えてもう一つ英語という言語を獲得するという意識を持とう。
- 瞬間英作文に代わるトレーニングとして、ディクトグロス、リフレージング、サマライジング、そしてシミュレーションの4つをお薦めする。英語脳を効率的に構築することを目的としたトレーニング方法だ。
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無料eBookの主な内容
- 単語・文法・発音の効率的な基礎力強化方法
- インプット(読む・聞く)能力向上のための英語脳作りトレーニング法
- アウトプット(話す・書く)能力向上のためのリハーサル・トレーニング法
- 学習計画の立て方と効率性を上げるための学習習慣
そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。